中学受験の助走で親が配慮すべきことは何?

 中学受験シーズンが終わりました。それに歩調を合わせ、学習塾は一斉に新年度の講座へと活動を切り替えます。受験準備の学習は小学4年生、もしくは5年生ごろに始めるケースが多いようです。今回は、そこに至る前段階の子どもの学習に保護者がどう関わるべきかについて書いてみようと思います。

 中学受験はわが子の将来を見据え、より善き成長に向けた流れを築くための選択肢の一つです。ただし、ご承知のように受験で志望校に合格すれば自動的に子どもの将来が確約されるわけではありません。どんな学習観を携え、どんな取り組みで志望校合格の夢をかなえるかが将来の歩みに大きな影響を及ぼします。以下でお伝えするのは、受験合格に有利かどうかよりも、「中学受験をより有意義なものにし、受験後のさらなる成長が見通せる子どもにするために求められる親の配慮」という視点からピックアップしたポイントをいくつか列挙したものです。
 

“伸びしろ”の豊かな子どもにするために心がけたいこと

1.「わが子を勉強嫌いにしない」を合言葉に!
 小学1年生のころは何にでも興味をもち、勉強も嫌がらなかったのに、2年生ごろから嫌がり始め、3年生になると「勉強なんてイヤだ。嫌いだ!」という子どもが一気に増えているそうです。原因として最も多いのは、親に「勉強しなさい!」と毎日のように強要されることだと言われます。いかにして勉強を受け入れ、勉強に対してプラスのイメージをもった子どもにするかが親には問われます。勉強嫌いの子どもに受験勉強をさせるのは酷ですし、将来に向けた伸びしろを奪ってしまいかねないのは自明のことでしょう。ではどうすればよいかですが、勉強を嫌がらず積極的に取り組む姿勢をもった子どもにするための方法は、この後の項目で順次お伝えします。

2.指示や命令を控え、子どもに問いかける。
 子どもの学びを活性化し、実行力を高めるには、指示や命令を控え、「宿題はいつやったらよいと思う?」など、子どもにどうするかを問いかけ、自分で判断する姿勢を引き出すことが大切です(エデュケーションという英語も“引き出す”が本来の意味です)。これなら、子どもは「自分で決めたことだ」という意識をもち、何をするにつけ実行力が伴います。「押しつけられた」という意識をもつと、全てが受け身に転じがちです。子どもは親が自分に何を期待しているかをある程度わきまえています。平静な心理状態のときに「どうしたらいいかな?」と問われたなら、大概は親の考えに沿った判断をします。期待外れの返答をしたときには、理由を尋ねたり、親の考えを伝えたりして、互いの考えを擦り合わせましょう。この辛抱がきっと実を結んでいきます。

3.やるべきことを自発的にやったときは大いにほめる。
 勉強だけでなく、やるべきこと、親がやってほしいことを子どもが自発的にやっていたら、すかさず大げさなくらいほめてやりましょう。時間が経ってからでは効果は半減します。この繰り返しを通して、子どもは親の期待が行動の自発性であることを経験則的に悟るようになります。また、自分からやったほうが叱られてやるよりもはるかに気持ちがよいことに気づきます。「やるべきことは自分からやろう!」という気構えが育つと、実行力が伴うだけでなく、取り組むときの活力も強まるものです。これが受験勉強の成果を大いに高めてくれます。

4.テスト成績よりも“努力”を子どもの評価軸に据える。
 受験生活においてはしばしばテストが実施されます。子ども自身は無論のこと、親もテストの成績に敏感にならざるを得ません。しかしながら、みんなががんばるなかでの成績ですから思い通りにならないのが普通です。なかには挫折する子どもも出てきます。そのことを見越し、今のうちに親の評価軸を明確に定め、それを子どもに浸透させておきたいものです。
 その評価軸とは、「結果よりも努力を重んじる」ということです。たとえ失敗しても、努力をしていたならそのことを取り上げて大いにほめるのです。これなら子どもは自信喪失に陥ることはありません。努力を継続した子どもは、すぐには結果が伴わなくても必ず力をつけていきます。それが将来の大成につながります。

5.親は少々楽天的に構えたほうが子どもはがんばれる。
 子どものすることは、親から見ると欠点だらけです。だからといって、そのたびに苦言を呈したり叱ったりしていると、子どもは自信を失ってしまいます。親は、「今はちゃんとやれないことが多いけれど、いずれやれるようになるさ」と、少々楽天的に構えることをお勧めします。
 ただし、子どもがどんな状態でも構わないという意味ではありません。子どもの行為のよい点とよくない点をきちんとチェックし、よい点を認めたうえで改めるべき点には意識を向けさせることが肝要です。定期的に子どもに声をかけ、冷静に自分のしたことを振り返るよう促しましょう。「おかあさんは、ちゃんとやったことは認めてくれる」「おかあさんはやたら叱ったりしない」と子どもが思ったなら、振り返りを促す言葉にも素直に耳を傾けてくれるでしょう。

6.ポジティブな親の働きかけが多いほど、子どもの勉強に勢いが生まれる。
 子どもが取り組んだプリントなどを見ると、親が〇つけをするだけでなく、大きな花丸や激励・賞賛の言葉をたくさん書き込んでおられるのをしばしば目にします。そういう家庭の子どもは例外なく学びに活力があり、授業での反応も活発です。児童期の半ば過ぎまでは、親の熱心さが子どもにそのまま反映されるということを肝に銘じておきましょう。
 子どもの間違いや失敗に厳しい言葉を浴びせるおかあさんがおられます。親の厳しさを受け入れて納得し、がんばろうという気持ちになればよいのですが、十分な信頼関係を築かずにただ厳しいだけでは子どもの奮起は期待できません。“ほめる”と“叱る”のさじ加減には十分ご留意ください。
 
 他にもお伝えしたいことはありますが、これぐらいにしておきましょう。これをお読みになって、「親は子どもを叱ってはいけないの?」と思われたでしょうか。そんなことはありません。叱るときにはきっぱりと叱ればよいのです。そうでなければ子どものまっとうな成長は期待できません。上記の6でもお伝えしているように、問題は親子間に確かな信頼関係があるかどうかです。親の期待や愛情が子どもにしっかりと伝わっていれば、叱るときの効果も大きいし、子どもだって嫌がりません。

 小学生までの子どもは、親にとっては何をするにつけても心もとなく見えます。しかし、それが小学生なのだと心得ましょう。そして、辛抱強く、かんしゃくを起こさずに見守り応援してやりましょう。そうすれば、やがて必ず親の苦労は報われます。親業は、辛抱と忍耐、我慢を強いられるもの。しかし、それをやり遂げた先にはわが子の素晴らしい成長が待っています。がんばりましょう!