夏休みならではの体験が子どもの成長を促す!

 もうすぐ夏休みがやってきます。今回はこの夏休みを生かすためのアドバイスをしてみようと思います。小学校低~中学年の保護者の参考になれば幸いです。

 夏休みは年間でいちばん長い休暇ですから、動植物の観察や自然探訪、調べ活動、ものづくりなど、日頃できないことに挑戦する絶好の機会です。実物を見たり、何かをつくったり、あるテーマを設けて調べてみたりすることは、子どもの成長に欠かせない原体験につながります。大いに夏休みを活用していただきたいものです。毎日自由に使える時間がたっぷりとある。――そんな条件は夏休み以外にはありません。日常生活でともすれば失われがちな瑞々しい五感の働きを蘇らせることもできるでしょう。そう、夏休みは今も昔も子どもたちの成長を引き出す、すばらしい舞台なのです!


① 夏休みには、お子さんの好奇心や冒険心を満足させる体験を!
 小学生時代には、「何かを思いっきり楽しむ体験をさせるべきだ」とか、「自分のやりたいことに、思う存分取り組む体験が必要だ」などとよく言われます。なぜでしょうか。ある教育学者は、「これらの体験は、子どもの生活に直接役立つことはないが、『小学生時代を思い残すことなく十分に楽しんだ』という思いが、次なる年齢期でのがんばりにつながる」と述べておられます。ところが、近年は子どもの生活も忙しくなり、こうした気持ちを満足させることなく児童期を終える例が増えています。

 子ども時代に思う存分好奇心を発揮する経験をすることなく、不完全燃焼のまま思春期に入った子どもは、何をするにも中途半端になりがちで、一途に燃えて何事かを成し遂げようという姿勢を欠きがちです。残念なことですね。常日頃、何かを習いに行っているお子さんは、自分の自由な時間が少ないことでしょう。おたくではどうでしょうか。せめて夏休みには、好きなことに熱中して取り組む時間をお子さんに与えてあげていただきたいですね。

 学校への通学がなく、1日のなかで自由に使える時間が得られる夏休みは、子どもがやりたいことに手を染める絶好のチャンスです。また、親子で遠くへ出かけたり、自然にふれあったりする時間も、夏休みならつくりやすいでしょう。是非お子さんに、夏休みならではの楽しい体験をさせてあげてください。

② 夏休みには、何か一つ親子で「調べ学習」をしてみてはどうでしょうか?
 先ほどの話題に関連しますが、この夏休みには普段の勉強とは違った観点から学びや発見のすばらしさをお子さんに体験させてあげたらどうでしょうか。日頃の勉強は「畳の上の水練」ではありませんが、どうしても実際の行動を通じて学ぶのではなく、机に向かっての勉強が主になってしまいます。また、大人が用意した材料をあてがわれ、それに取り組む勉強がほとんどです。

 しかしながら、近年社会で求められている人間は、問題のありかを自分で突き止め、自ら解決法を見出せる人間です。こうした能力は、通常の勉強だけでは身につきません。「これは、どういうことなのだろう?」「どういうふうになっているのかな?」と、不思議に思うことを自分で見つけ、自分で調べて究明していくような体験を積み重ねてこそ身につきます。

 最近、家庭での会話において「なぜ?」「どうして?」と、お子さんが尋ねたり、知りたがったりしたことはありませんか? このような疑問のなかから課題を見つけ出し、親子で一緒に調べたり、観察したりする学習をしてみてはどうでしょうか。効率性が高い半面、ややもすれば画一的になりがちな、学校や塾などでの学習とは違った貴重な学びの体験ができるでしょう。こうした体験は、自発的な学びの姿勢を育てるだけではありません。小学生時代を象徴するできごととして子どもの脳裏に刻まれることでしょう。そしてそれは、親にとっても子どもと共有する貴重な思い出となるはずです。

 

 

③ せっかく築いたよい習慣を夏休みに失わないように!
 ここまで、夏休みだからこそ体験しておきたい事柄について書いてきました。ただし、学校で学習したことや、学習塾で培ったことを忘れてしまっては困ります。また、せっかく身につけた学習習慣も、夏休みでガタガタになったというのでは、これまでの努力が台無しになってしまいます。このような例は枚挙にいとまがありません。保護者にはぜひご配慮いただきたいですね。

 習慣というものは、築くまでが大変で、長い期間にわたる継続が必要です。ところが、失うのは実に簡単で、ひと夏のうちにいともたやすく壊れてしまいます。学校への通学が軸にある期間は、自ずと朝の起床→食事→身支度→学校といったように、一定の流れやリズムができあがりますが、学校がない夏休みはそうはいきません。親子で毎日をどう過ごすかについて、しっかりした計画を立てることが大切です。また、いざ夏休みが始まったら、計画に沿った生活がうまく送れているかどうかを保護者も継続的に見守るとともに、一定のスパンで親子一緒に振り返ることをお勧めします。ただし、くれぐれも振り返りの場でわが子を叱ることに終始しないようご配慮願います。子どもというものは、そもそも不完全で未熟な状態にあるのですから、「がんばろう」という気持ちを引き出すような接しかたを心がけてくださいね。

 ところで、みなさんのお子さんが通っておられる学習塾では、夏休みの講座を実施されると思います。学校の夏休み帳や宿題などとさらに組み合わせれば、夏休み全体の学習バランスは程よいものになると思います。そして、家庭学習の習慣も失われる恐れが軽減されるでしょう。無論、大半のご家庭では以上のようなことは織り込み済みで、すでに夏の講座への申し込みを済ませておられることでしょう。もしもまだのご家庭がおありでしたら、夏休みのスケジュールと突き合わせ、検討してみてはいかがでしょうか。

 夏休みは、普段と違う体験を通して子どもの成長を促すチャンスです。親子で話し合って、楽しい夏休みのプランを計画しましょう!

※①で紹介したリチャード・ファインマン氏のエピソードは、「ユダヤ人が語った親バカ教育のレシピ」アンドリュー・J・サタ―&ユキコ・サタ―/著 インデックスコミュニケーションズより引用しました。