まずは確固たる学習習慣を築きましょう!
全国各地で学習塾の新年度講座が始まりました。4月になると学校も新学期を迎えます。「何事も始めが肝心」と言われるように、スタート段階をうまく乗り切ると流れがスムーズになります。学習も例外ではなく、助走でうまくペースをつかむとリズムや継続性が生まれてきます。逆に、初期段階でもたつくと、いつまでも成果に乏しい状態が続きがちです。学習塾での勉強と連動させ、家庭での勉強をうまく軌道に乗せていきたいものですね。初心を大切にし、それを維持できるようお子さんを励ましてあげてください。
家庭での勉強というと、学校の宿題やドリルの学習、学習塾のテキストやプリントの学習、授業の復習などがありますが、これらを家庭生活や他の習い事などと照らし合わせてスケジュール(学習計画)を作成しましょう。そして、決めた予定に沿って取り組むことを継続すれば、段々と勉強にリズムが生まれ、やがて確固たる学習習慣が形成されていきます。習慣とはすばらしいもので、いったん身につくと体が自然と動いてやるべきことに向き合うようになります。学習に継続性が生まれると、頭脳も日々の勉強に対応した体制を整えていきますし、勉強の面白みもわかるようになっていきます。この流れをつかんだ子どもは、やるべき勉強をやらないと気がすまないレベルに到達します。こうなると成果は上がること請け合いです。まずは適切で無理のない計画を立て、それを実行に移すことを徹底させましょう。
学習習慣の形成にあたって、保護者に気をつけていただきたいことがあります。児童期までの子どもは、まだ先のことまで考えて行動できるレベルに到達していません。そのときの気分に左右されがちで、親から見て「遊びと勉強の切り替えができない」、「自覚が足りない」、「やる気がない」などのように感じる場面が多々生じるものです。こういうときの対処を誤らないようにしていただきたいですね。
自分の行動の主人公はほかならぬ自分です。この「自分のことだ」という自覚が大切です。「これは自分のために必要なことだ」「自分で決めたことだ」という気持ちで勉強に取り組むのと、親に指示されたり命じられたりして勉強に取り組むのとでは、気持ちのうえで大きな違いがあるからです。ですから、学習計画の作成に当たっては親が采配を振るうのではなく、まずは子どもの考えを聞くことが重要でしょう。適切でないと感じたら、「おかあさんはこう思うけど、どうかな?」など、子どもの気分をくじかないような対応をしながら、妥当な計画に近づけてください。こうすることで、子どもの実行力はずいぶんと違ったものになります。また、4年生ぐらいまでは子どもが自分の判断でやれることは限定されています。一緒にやりながら、子どもが一人でできそうなら「がんばってみよう」と見守り、難渋しているようならヒントを与えたりするなど、勉強の自立につなげるような対応を意識してください。子どもは「やるべきことを自分でやった」と思いたいし、親にもそうアピールしたいという気持ちがあります。それを尊重することが早期の自立につながります。
ただし、前述のように児童期の子どもはそのときの気分に流されやすいものです。また、他のことに心を奪われると、勉強がそっちのけになることもあります。勉強の時間になっても一向に取り掛かる気配がないと、親はイライラしがちですが、そういうときの対応が大事です。「いい加減にしなさい!もう勉強の時間でしょ!」などと叱ってしまいたくなるものですが、これは子どもの自立に向けては逆効果を招く対応です。こんなことが何度も続くと、子どもは自分が悪いとわかっていても反発し、取り組みの自発性はスポイルされてしまいがちです。子どものプライドを尊重し、多少取り掛かりが後手に回っても、子どもが自分でやっているのだという気持ちが損なわれないような対応をしてあげてください。そうすれば、お子さんは親が関わらなくても自分で自分のやるべきことをコントロールできる子どもへとしだいに成長していきます。
親の見守りや応援のありかたについて考えさせられたことがあります。先日5年生の女の子のおかあさんから学習状況に関する相談を受けました。「塾の成績の低迷が続き、いろいろ心配して声をかけてきたのですが、最近はほとんど返事をしてくれなかったり、『ちゃんとやっているんだから、ほっといて!』と口答えをしたりするようになりました。どうしたものか悩んでいます。最近はやる気を失っているようだし、もう中学受験は無理なんでしょうか」といったようなことをおっしゃいました。みなさんも、似たような状況でお悩みになっていませんか? もしもそうでしたら、原因はどこにあるとお考えですか?
娘さんの成績推移を調べてみると、教科によって大きな波は生じておらず、4教科が足並みをそろえているかのように同調して上がったり下がったりしながら、段々と全体的に下降線をたどっています。おかあさんは娘さんの勉強の面倒を直接見るようなことはされておらず、基本的にはお子さんに任せておられるようでした。しかしながら、成績が下がると心配して言葉をかけたり叱ったりを繰り返しておられるようです。おかあさんは、「そのつもりはないんですが、ついくどくど叱ってしまいます」とおっしゃっていました。子どもはわかっていることを何度も言われると、素直に親の言葉を聞かなくなっていきます。それに苛立ってさらに叱ってしまう保護者は少なくありません。これが娘さんの成績不振の長期化やネガティブな学びの姿勢の原因となったのではないでしょうか。
そのおかあさんに対し、私はまず「普段から楽しい会話を心がけましょう」とお伝えしました。そして、「成績が下がるのを気にするよりも、お子さんがやるべきことに向き合って努力することを奨励し、がんばりを感じたらそのことをまず喜びほめてあげてください」と申し上げました。娘さんにしたら、成績の低下を心配していろいろ言ってくる親よりも、自分を信じて応援してくれる親のほうを歓迎するに違いありません。親はポジティブな姿勢でわが子に接し、それを貫くべきです。そして、「成績よりもやるべきことをやり遂げる姿勢を尊重して見守るようにしたいものです。親子の信頼関係がしっかりすると、子どもは元気よく学ぶようになります。そのことをお伝えし、おかあさんを励ましました。
以上のことはみなさんにも当てはまるでしょう。子どもの主体性を重んじ、子ども自らが勉強に取り組む状態をまずは築きましょう。勉強に活気が生まれ、習慣づけがうまく進むと、成績は否が応でも上がっていきます。最後にもう一度言います。「何事も始めが肝心!」 新年度のスタートをきっかけにして、お子さんの溌溂とした学びの実現に向けて応援してあげてください。