子どものやる気を引き出すほめかたの原則
前回は、小学校の高学年の子どもたちを対象にして実施したアンケートの結果をご紹介し、「どんなほめられかたを子どもが歓迎するのか、それともいやだと感じるか」についてともに考えていただきました。参考になる点はあったでしょうか?
今回は教育心理学や発達心理学などの知見も加味し、親がわが子をほめるときにどういった点を意識したらよいかについてまとめてみました。前回ご紹介した子どもたちへのアンケート結果からも、小学校の高学年ともなると、親の意図が透けて見える安易なほめかたはもはや通用しないということがわかりましたね。そこを踏まえ、子どもの心に響き、子どもを奮い立たせるようなほめかたとはどういうものかを考えてまいりましょう。
親が実践すべきほめかたの原則
上記の①~④に対応する望ましくないほめかたを以下にあげてみます。
①口先だけでほめる。上からの目線でほめる
②全体的な評価をする、才能や能力をほめる
③結果を見てほめる
④「よくやった」などと上からの目線でほめる
まずは①から見てまいりましょう。すでに確認したように、「ほめさえすれば子どもは喜ぶだろう」という考えは、児童期後半の子どもにはもはや通用しません。家事をしながら、よそを向いたままほめるのも、子どもの心に響きません。親として、「がんばっていたな」と思うことについて、心からのほめ言葉をかけてやりたいものです。子どもは、親の本心を間違いなく見抜きます。親の愛情を感じ取り、安心と勇気を得ることができます。
つぎは②について。全体的評価とは、行為の一つひとつではなく、能力を評価すること(レッテル貼り)です。「あなたは優秀な子ね」と言われると、子どもが実際とのギャップを感じて素直に喜べません。いっぽう、子どものしたことを具体的にあげてほめたなら、それは事実ですから素直に喜ぶことができます。能力をほめられると、何をするにも失敗を恐れる気持ちが生じますが、具体的行為をほめられたなら、このようなプレッシャーに悩まされることはありません。
③について。がんばっていないのにテスト成績だけを見てほめられると、子どもは「結果さえよければいいんだ」と思うようになる恐れがあります。ズルをしてよい結果を得ようとしたり、親を見下したりする恐れもあるでしょう。いっぽう、自分の努力を親が見ていて、がんばりをほめ称えてくれたならどうでしょう。失敗しても「次こそは!」と、子どもは奮い立ちます。困難に負けず、粘り強く物事に取り組む姿勢は、このような親のもとで育った子どもです。
④「これならまあいいだろう」といった、上から目線のほめかたも避けたいものです。子どもの次なる奮起を引き出す効果が得られないからです。子どもが心底親を尊敬していれば効果があるでしょうが、それは全ての保護者に当てはまるわけではありません。むしろ、「いつまでも子ども扱いされている」「おとうさんだって、いつもいいかげんじゃないか」など、親に対する不満や批判の気持ちを増幅させる恐れもあるでしょう。
なかには、「子どもにそこまで気を使う必要があるのか」と思われたかたもおありかもしれません。しかし、ほめるという親の行為は、「うまくやったらほめてやる」といった、交換条件に基づくものではありません。子どものプライドや有能感を育て、何事にも率先して行動する自立した人間に育てるためにするものです。ある評論家は、「ほめるという行為は、子どもをがんばらせるためにあるのだ。ほめるところがないからほめないというのでは、いつまでたっても自らからがんばろうという姿勢は築けない」と述べておられます。
※「親が実践すべきほめかたの原則」を4つの項目でまとめるにあたっては、「行動を起こし、持続する力(モチベーションの心理学)」外山美樹/著 新曜社 を参考にしました。
<押さえておきたい!> 小学生のやる気の元は、親のほめ言葉です!
1.ほめるという行為は、子どもを励ますためにあるのです。
あるおかあさんが、「うちの子は、ほめてやりたくてもほめるところが全然ないんです」とおっしゃいました。似たような気持ちでいるおかあさんはおられませんか? 上記の①~④でご紹介したほめかたの根底にあるのは、子どもの成長を願う親心です。コラム末尾でお伝えしたことを思い出してください。子どもをほめるのは、子どもを励ますためです。よい行いとの交換条件などではありません。子どものしていることをしっかりと見届け、よいところを見つけてほめてやりましょう。
2.間接的なほめかたも加えると効果が増す!
大人でもそうですが、目の前にいる人以外の誰かが自分をほめていたことを知ると、とても気持ちがよいものです。たとえばおかあさんから、「このあいだ、あなたが転んで泣いていた近所の子をおぶって家まで連れて行ってあげたそうね。その子のおかあさんがとても感謝されていたよ。いいことをしたね」と言われると、二重にほめられたようで元気が湧いてくるのではないでしょうか。また、「あなたが〇〇をしていたこと、おかあさんはとってもうれしいよ。おとうさんにも伝えてあげたいわ」などのような言いかたも、子どもの心によい作用をもたらします。