子どもを伸ばす会話の基本って!?
もうすぐ夏休みがやってきます。いつの時代も、小学生の子どもにとって夏休みほど待ち遠しいものはありません。今から家族で様々な計画を立てておられる家庭もおありでしょう。夏休みだからこそ可能な、とっておきのイベントを実現してください。
さて、今回は家庭での親子の会話を話題に取り上げてみました。先月の末ごろ、小学生をもつ保護者を対象としたセミナーを私の住んでいる地域で2回ほど実施しました。そのときに話した内容の一部をここでご紹介してみようと思います。夏休みは親子で時間を共有する機会が増えることでしょう。このチャンスを大いに生かし、お子さんの成長を引き出すよい機会にしていただきたいですね。親子の会話の充実は、親子の信頼関係を強化するうえでも役立ちます。
会話において何よりも留意すべきは「双方向の会話を心掛ける」ことです。以前お伝えしたかと思いますが、ある団体が親子の会話時間の実態を調べたところ、1日あたりの会話の時間を親の多くは「30分~1時間ぐらい」と答えたのに対し、子どもは「15分ぐらい」と答えたケースが多かったそうです。なぜこのような齟齬(そご)が生じたのかというと、親はいつも忙しく生活しているため、わが子との会話機会があると無意識のうちに伝達や指示を優先しがちです。いっぽうの子どもは、親子で楽しいやりとりを交わすのが会話だと思っているので、双方向なやりとりのみを会話時間にカウントするからのようです。耳の痛い思いをされたおかあさんもおられるかもしれませんね。
もう一つ心に留めていただきたいのは、「話すことと聞くことがキャッチボールのように繰り返されながら話題が発展していき、楽しい時間が共有されるような会話を心がける」ということです。子どもは毎日の生活を通して新鮮な驚きや感動を実感する体験をしています。無論、情けなく悔しい思いも体験しています。これらを丸ごと受け止めてもらえる会話こそ、子どもが親に求めているものです。ただし、子どもには自らの思いをうまく言葉にできないもどかしい現実があります。「おかあさん、あのね、今日ね……」と切り出したものの、適切な言葉が続いて出てこず、もたもたしがちです。保護者のなかには苛立って途中で遮ったり、先回りして答えたりしてしまうかたもおありでしょう。しかしながら、これでは子どもの心を満たす会話になりません。会話の上達も見込めないことでしょう。
親子間の楽しい会話の機会が増え、言葉のやり取りの数が増すと、子どもの心理面での安定や充足に伴って知性開化に向けた流れも築かれていきます。たとえば語彙の増強、複雑な思考内容を理路整然と言葉にして表現する力、人の話していることを聞き漏らさずに理解する力などが目に見えて進歩を遂げるのです。親子の会話が豊かな家庭の子どもは、学校や塾の先生の言葉遣いにもなじみやすく、少々難しい表現にもついていけるため、説明内容をよく理解できます。また親との会話で丁寧に順序だてて話すことに慣れておけば、教室での発表や質問の機会にも大いに役立ちます。それが自信とやる気をもたらし、子どもの全体的な成長を後押ししてくれることになります。まさにいいところだらけなのです。
そこで、これから「親子間の双方向な会話」「話が次々に発展していく充実した会話」はどうしたら実現するのかについて一緒に考えてみましょう。
1.互いの目を見て話す。
心の通じ合う会話は、相手の目を見て話すことによって実現します。話し手の真意がダイレクトに相手に伝わるからです。少し照れ臭いと感じるおかあさんもおられるでしょうが、大事な話をしたいときにぜひ試してみてください。
食卓のテーブルの椅子に隣り合わせで座り、わが子の手を取ってまっすぐに目を見て話すと、子どもも無意識のうちにおかあさんの目を見返してくるでしょう。当然会話に集中する雰囲気が生まれます。こういう会話を経験すると、おのずと相手の話に耳を傾ける姿勢が育ちます。
2.頭ごなしに叱らず、子どもの言い分も聞く。
子どもは様々なしくじりを繰り返します。それにどう対応しておられますか? 小学校中学年頃になると、子どもにもプライドが育ち、素直に自分の非を認めようとしなくなります。そこで、「どうせ言い訳でしょ!」といった対応をしてしまいがちですが、そうするとたちまち会話は閉ざされてしまいます。特に、がさつなタイプの男の子には、何かあるたびに「またやってくれた!」とばかりに叱り飛ばすと、子どもは会話を通して成長することができません。まずは子どもへの疑念や怒りを抑え、丁寧に子どもの言い分を聞いてやりましょう。すると、意外な事実が判明して子どもの面目が保たれるケースもあります。その結果、親に対する信頼の気持ちも深まり、会話への積極的な姿勢も育つことになります。

3.修飾語や接続語を意識して用いる。
子どもにとって、親(特におかあさん)の使用する言葉は格好の手本です。そこでご提案したいのは、修飾語や接続語を効果的に用いた表現方法を子どもとの会話で多用することです。修飾語は、状況を克明に詳しく説明することを可能にします。接続詞の使用は、複雑な内容を順序だててわかりやすく説明することを可能にします。それが子どもに好影響を及ぼすのです。
たとえば、親子でショートケーキを食べたとき、「これ、おいしいね」「ほんとだね」でも会話は成立しますが、「このケーキ、甘すぎないし、生クリームも舌触りがよくて、とってもおいしいね」などと少し詳しい表現をすれば、子どももそれに倣って、おいしさについて自分の感想を言葉で表現するようになるでしょう。これに加えて、「とてもおいしいんだけど、苺が少し酸っぱいのが残念だね。もっと甘ければ完璧だったと思うよ」などと接続語を用いた言いかたをすれば、子どもにとって会話の肉付けをしたり構造的な会話表現をしたりするための参考になることでしょう。
4.親の愛情や期待が伝わる会話を心がける。
言うことなすことが完璧な子どもなんていません。むしろその逆で、イライラさせられたり、心配させられたり、がっかりさせられたりすることのほうがはるかに多いのが現実です。しかし、そのたびに注意したり叱ったりを繰り返すと、直に子どもは親の言うことを聞かなくなりますし、楽しく弾むような会話と縁遠くなってしまいます。
子どもの過ちは本人が意図しなかった原因によるものが大半です。失敗の後の会話で大切なのは、子どもが失敗を素直に反省し、改めようという気持ちを引き出すことです。たとえば、子どもがちょっとした言い間違いをしたとき、「それ違うよ。そんなことも知らないの!?」と言われるよりも、「あれは難しい言葉だから、間違っても仕方ないよ」と優しくフォローされたほうが、子どもの気持ちは救われ、「今度は間違えないぞ」という気持ちになるでしょう。子どもが今までに経験のない新たな表現を使おうとしたときには、うまく言えたかどうかよりも新しい表現を試みたことをほめたり尊重したりすることを忘れないでください。それが子どもを成長させていくのですから。
親子間の会話は、365日ほとんど途切れることがありません。この会話を通しておびただしい言葉のやり取りがあり、子どもは常に親を通して会話の技術や言葉遣いを学んでいきます。毎日の会話に対する意識をちょっとだけ変えてみませんか?そのわずかな配慮や工夫が子どもを劇的に変える可能性もあるのです。今回お伝えしたことが多少なりとも参考になれば幸いです。

