読んで理解する力を強化する方法 その2
このところ、読んでも理解できない子ども、勉強しても成果があがらない子どもの存在を取り上げ、このような事態がなぜ生じているのか、どんな対策が有効かについてお伝えしています。今回は前回に引き続き、有効な対策について共に考えてみましょう。お子さんの読みの現状に不安が少しでもあるかたは、読みの力のテコ入れにこの記事を役立てていただければ幸いです。
③滑らかに正確に読めるようになるまで音読の練習に励む。
読みの経験が浅いと、文字列から言葉のまとまりを見つけるのに手間取ります。低学年までの子どもが逐字読みをしたり、逐語読みをしたりするのは仕方ないことでしょう。しかし、読みの練習が繰り返されることでしだいに改善されます。つまり、読みの力をつけるには経験を積むこと、慣れることが必須であり、そのステップを踏んでいけば誰でも上達します。
1.言葉を仕分けしながらゆっくりと音読する練習を繰り返す(3か月)。
ゆっくりと一定のペースで声に出して読むことで、音韻の符号化の鍛錬が進みます。それと連動させ、書かれている状況を場面として思い描くことが大切です。何につけそうですが、物事が板について様になるには100日前後はかかります。毎日(休養日をはさんでも構いません)15~20分ほど取り組みましょう。声はできるだけ大きくはきはきと出すようお子さんに助言してください。大きい声で読むことで読みが積極的になり、自信もわいてきます。また、日常の会話においても明るく元気のよい雰囲気がお子さんから感じられるようになります。相乗効果です。
2.音読の練習の際には、保護者がそばで聞いてあげてください。
子どもは、親がそばで見守って励ましてくれるとがんばろうという気持ちがわいてきます。音読のよい点は、読みの巧拙が読んでいる子どもにも、そばで聞いている親にもわかるところにあります。音読練習を見守ってやりましょう。
「だいぶ上達してきたよ」「あそこ、惜しかったね!」など、お子さんを発奮させるような声かけを心がけたいですね。こうして継続的に練習を続けると、言葉のまとまりやつながりを目で仕分ける作業が自然と楽にできるようになります。それにつれてイメージングも連動するようになっていきます。
④「読書」と「親子の会話」を日常生活に浸透させる。
文意を理解するうえで、言葉の知識は多ければ多いほど楽になります。逆に、見慣れない言葉が頻繁に出てくると文意の理解に難渋しますし、読もうという意欲も減退してしまいます。英文解釈の勉強をするとき、1行に2つも3つも初出の単語が出てきて閉口した経験はどなたにもあるでしょう。小学生の子どもにとっては、日本語で書かれた文章だって同じようなものです。日常から語彙の増強に努めましょう。語彙を増やすうえで最も効果があるのは「読書」と「家庭内会話」です。この二つを効果的に生かすために気をつけたいことは以下の通りです。
1.読みは読むほどに上達します。読書を励行しましょう!
上述の音読練習の進捗に合わせ、読みの負担が軽減されていくと、それに呼応して子どもの読書意欲も向上します。この流れを生かし、子どもに読書の習慣を根づかせたいものです。
9~10歳は、人生でいちばん語彙の増加率が高い時期であり、年間4割近い増加率を記録するほどです。そして10~11歳では年間6300語以上も新しい語彙を獲得します。いわゆる「語彙の爆発」と呼ばれる現象が生じるのですが、それは小学2~3年生頃から築いた読書習慣があってこそのことです。何もせずに語彙の爆発的な増加は生じません。まだ読書習慣が根付いていないお子さんには、今からでも音読の練習で読みを快適にし、読書の楽しさを知る経験をしていただきたいですね。
2.読書で脳内の情報処理を担うワーキングメモリが鍛えられます。
読めば読むほど読みの力が向上するのは、読みを通じてワーキングメモリが鍛えられるからです。ワーキングメモリとは、人間の脳に宿る短期記憶の機能で、一時的に記憶を保持して様々な情報を整理し、必要な形にまとめる働きをします。そして、不要になった情報を消去します。読書をするとき、文章を目で追って行きながら、話のアウトラインをつかんだり、重要な点を記憶に留めたりするときにワーキングメモリは絶え間なく働いています。
ワーキングメモリは読書だけでなく、日常のあらゆる場面で働いています。おかあさんがたが家事で料理の段取りをしたり、洗濯物の取り入れをしたり、洗い物を片づけたりなど、多岐にわたる作業の順序やタイミングを計ったりするときにも、一時的な情報の整理や行動の手順決めなどに寄与しています。
ただし、ワーキングメモリは、容量が小さいのが特徴です。特に子どもの場合、読むことにメモリの大半を使ってしまい、文意の理解が手薄になりがちです。音読練習や、読書習慣を形成することの重要性がおわかりいただけるのではないでしょうか。読みが低負荷でできるようになってこそ、内容理解に余力が向けられるようになるからです。
3.親子間の会話も語彙増強に一役買っています。
子どもの語彙を増やすうえで重要な働きをするものがもう一つあります。それは親子の会話です。特におかあさんの言葉遣いは子どもにとって模範となります。また、時折出てくるやや難解な言葉は、子どもの新たな語彙獲得の格好の場を与えてくれます。子どもにとっておかあさんは、まさに言葉の先生と言えるでしょう。その言葉の先生と一緒に会話を交わす時間がどれぐらいあるかで、子どもの言葉の発達も少なからず変わります。
実生活で言葉の具体的な使用方法を知る。このことは、子どもにとって「言葉の微妙なニュアンス」を学ぶことにつながります。同じ言葉でも、使用場面が異なれば違う意味合いになることがあります。そのことを知る経験が多ければ、文章を読んで言葉の意味を推理する際にもずいぶん助けになるでしょう。親子の会話については、また別の機会に詳しく取り上げますので、ここでは以上にしておきましょう。
読んでいるのに、読めているはずなのに意味が理解できない。その原因と対策を3回にわたって取りあげてみました。思い当たる原因や、対処法について多少なりとも参考になればうれしいです。なお、学力の土台形成において小学生時代は極めて重要な時期にあります。勉強がうまく立ち行かない状況が少しでもあれば今のうちに対処すべきです。次回は、これまでお伝えしたことを受け、読みの習熟と学業成就について私の考えをまとめてみようと思います。よろしければ読んでみてください。

