読んで理解する力を強化する方法 その1
前回は、読んでも理解できない子ども、勉強しても成果が上がらない子どものことを話題に取りあげてみました。文章を読んで理解するためには、「音韻の符号化」と「イメージング」の連携が必須となりますが、読んでもわからないのは、この二つのうちのどちらか、もしくは両方に、あるいは両者の連携に問題があります。前回、思い当たる原因をいくつかあげましたが、今回はその対処法を考えてみましょう。
① 「わが子はほんとうに読めているか」を確かめる。
最初に確かめておくべきことがあります。「読めている」はずが、実は「読めていない」のかもしれません。すなわち、「音韻の符号化」が機能していないのです。「音韻の符号化」とは、「文字の一つひとつに対応する読みの音を頭に思い描く」ことです。これができないと正確な黙読はできないし、著述内容の理解もできません。なぜなら、書き言葉の誕生は人間の歴史においてごく最近のことであり、数万年に及ぶ音声の言葉の歴史とは比較になりません。したがって、音声の言葉は聞いただけで理解できますが、書き言葉は音声の言葉と照合してはじめて理解可能になります。音韻の符号化とは、書き言葉を音声の言葉に変換する作業なのです。
1.文字を読めるようになるまでのプロセスを振り返ってみる。
多くの子どもは2~3歳ごろから文字にふれています。絵と文字が背中合わせになった積み木を使い、「アサガオのア」「カラスのカ」などとわが子に教えた経験はありませんか? 子どもは、こうした働きかけで文字とその文字に対応する読み(音)を学びます。それから、絵本を手におかあさんが声を出して読み聞かせ、文字の連なりが言葉を紡ぎ出すことを教えます。そして、段々と子ども自身が声に出して文字の音を発するようになり、さらには文字列から言葉を抽出して意味づけをしながら読めるようになります。これが音読です。
音読練習の経験を通して、子どもはしだいに文字列を見ただけで読みを声に出さなくてもイメージできるようになります。これが黙読です。黙読は音声を伴わないので負担が著しく軽減されます。これが子どもを読書へといざなうのです。ただし、問題はそこに至るプロセスです。中途半端な音読力のまま黙読へ移行すると読みに手間取り意味理解も不十分になりがちです。おたくのお子さんはどうでしょうか。
2.今一度子どもに音読をさせ、読みの実態を確かめる。
黙読が達者な子どもは、文章を速くよどみなく読み通せます。文字のまとまりや接続の関係も瞬時に仕分けられるので理解が伴います。黙読力の足りない子どもは、読むのに時間がかかるだけでなく、文意を正確に読み取ることができません。ただし、黙読の実状は傍目にはわかりません。だから「うちの子は読めているのにわかっていない」となるのです。
子どもの黙読力をチェックするには、音読させてみることです。音読が不自由なくできてこそ黙読が可能になるからです。ためしに、児童文学書などをお子さんに1~2ページ音読させてみましょう。たびたび躓くようなら、「音韻の符号化」に支障をきたしています。読んでも文意をうまくつかめないことでしょう。毎日15~20分音読の練習をしてください。最低3か月は必要です。一気に間違えずに読めるようになったなら、「読んで理解する」ための前提が整います。音読の練習はできるだけ楽しい雰囲気のもとでやりましょう。間違いを咎めず、「うまくなっているね」など、励ましの言葉をかけてあげてください。長続きしてこそ成果は上がります。「強制されている」と感じると、子どもは楽しくありません。

② イメージングを妨げている原因を突き止めて対策を講じる。
ここまでは、「音韻の符号化のプロセスに問題があるのではないか」という点に着目し、その原因と対策について考えてみました。つぎに、イメージングとの連携のなかに問題がある可能性を考え、それがどういうものか、どう対応したらよいかをお伝えしましょう。
1.「読むこと」と「イメージング」を連携させながら読む。
音読であれ黙読であれ、子どもは間違えずに読もうとすると、読むことだけに気を奪われ、文字を通して描かれている場面をイメージすることを忘れてしまいます。その結果、読んでも著述内容が理解できないという事態を招くのです。正確によどみなく読むこと」と、「著述場面をイメージする」ということを同時進行的に連携させながら読む姿勢を築いてこそ、「読んで理解する」ことが可能になります。
そこで、試しに短い文章を用意し、「文章を集中して一気に読み切りなさい」とお子さんに伝えてみてください。そして読み終えたら、「何が書いてあったかな」と尋ねてみましょう。スラスラ答えてくれれば問題ありません。しかし、「ん?……わかんない」などと反応したら、場面をイメージしながら読んでいないということがわかります。

上図のようなお子さんの場合、ゆっくりでいいから音韻の符号化と場面のイメージングの両方を意識した読みの練習を当分の間はさせる必要があります。読み終えた後、必ず何が書いてあったかを簡単に説明させましょう。くれぐれも苛立って叱らないようお願いします。
2.「イメージング」に支障をきたす要素を取り除く。
そもそも、音韻の符号化と場面のイメージングを連携させることができない子どもがいます。能力的な問題ではなく、性格的な問題や望ましくない癖が染みついた結果です。たとえば、おたくのお子さんは集中した状態が長続きせず、いつのまにかボンヤリしたり、周辺の携帯ゲームや漫画本などに手を伸ばしたりしていませんか? また、読んでいたはずが何かの拍子に他のことを思い浮かべたりしている子どももいます。これでは読みは中途半端な状態に終始し、イメージングとの連携は不可能でしょう。
読みの作業中はほかのことが入り込まないよう留意しましょう。「読み終えるまでは、集中しようね」「読むときには、机の周りに勉強と関係ないものを置かないようにしようね」「読んでいるときには、背筋を伸ばしてきちんと座ろうね」などと声かけをし、読みに専念できる状態を整えてあげてください。机の上をすっきりした状態にする、よい姿勢で読むなど、ごく基本的なことを大切にしましょう。長年学校現場で活躍されたある先生は、「机の上に邪魔なものを置かない、背筋を伸ばした着座姿勢で勉強する、この二つがしっかりした子どもは例外なく学力優秀になります」と述べておられます。読みの成果をあげるうえでも同じことが言えるでしょう。お子さんの現状を振り返ってみてください。
今回はここまでとしましょう。次回も引き続き読んで理解する力を強化するための方法についてお伝えしようと思います。よろしければ参考にしてください。

