読めているのにわかっていない それはなぜ?
「うちの子は勉強しているわりに、なかなか学力が伸びません」こんな相談を受けることがあります。「勉強に取り組めば、学力は身につくはず」と、たいていの人は思います。その考えは間違っていません。しかし、現実には勉強が空回りしている子どもが一定数います。しかも、中学受験をめざすような高い目標をもつ子どもにもいるのです。これはどういうことでしょうか。
学校や塾で勉強している子どもが、教科書やテキストを満足に読めないなどということはあり得ません。実際、ほとんどの子どもはちゃんと読めています。では、文章を読めるのになぜ理解が及ばないのでしょうか。なぜ成績が振るわないのでしょうか。今回は、「読めても理解できない子ども」にスポットを当ててみました。
今年の2月ごろ、4年生の女の子をもつ保護者に同じような悩みについて相談を受けました。この女の子の国語指導を担当している人に学習の様子を尋ねると、つぎのような見解を述べていました。「我々がいちばん指導の成果をあげにくいのはこういうタイプの子どもです。いろいろ手を打っても効果が得られません。何しろ本人はさぼっていないし、ちゃんと勉強しているつもりなんです。でも、書かれている内容を上っ面しか理解していないんです。算数の文章題では、解を引き出すための式を立てることができません。設定されている数のもつ意味がわかっていないからです。国語の選択肢形式の問題では、本文の著述内容と照合してどれが適切かを比較検討することができません。だからしかたなく勘をたよりに答えているんです・・・」
こういう子どもは勉強しても楽しくないことでしょう。よく投げ出さずに続けているなと感心してしまいます。おそらく親の期待を受け止め、「がんばらなければ」という自覚があるのでしょう。根がまじめなのですから、ちゃんとした勉強法さえ身につければ、相当なレベルの学力のもち主になれるはずです。改善に向けてよい手立てはないものでしょうか。そのために、まずは保護者の方々に知っておいていただきたいことがあります。それは、前回の本コラムでもごく簡単にお伝えしていますが、もう一度確認してみましょう。
① 文章を読んで理解するために必須となる要件
文章を読んで理解するためには、「言語コード」と「イメージコード」を組み合わせる脳内作業が必要です。すなわち、文章を成り立たせる文字列と、その読み(音)とを照合してよどみなく読み進めること。そして、言葉の連なりが表現している場面を具体的にイメージしていくことです。この二つは連動しなくてはなりません。いくら言葉をなぞって読めたとしても、それが何を意味しているのか、表現しているのかを実場面のように想像できなければ、何が書かれているのかを理解したことにはなりません。つまり、読めることと理解できることとは別物なのです。
以上のことを、もう少し具体的にご説明しましょう。

文章を読むには、文字列とその読み(音)とを照合する必要があります。音読なら声に出しますが、黙読なら読みの音を脳内で想像していきます。それに連動して、描かれている場面の様子を具体的にイメージすることで著述内容を理解していきます。つまり、読むということは「音韻の符号化」と、「場面のイメージング」との連携なのです。では、文章を読んでも理解できない子どもは、どこに問題があるのでしょうか。考えられる点を大雑把にあげてみましょう。
② 文章を読んでも理解できない理由
1.“読み”に集中できる姿勢や環境が整っていない。
文章の著述内容を理解するには、読むことに集中する必要があります。それができない何らかの理由を抱えたまま読むと理解が伴いません。たとえば、机の上にいろいろなものが散乱していたり、ゲーム機や漫画本が周囲にあったりすると気が散ります。周囲から聞こえてくる音も、読みの作業にとってよくありません。また、子どもが注意散漫な性格で集中力を維持できないタイプだと、読みに無駄な時間がかかるだけでなく、理解も困難になりがちです。さらには、読むときの着座姿勢も影響します。足をぶらぶらさせながら読んだりすると、読みへの集中の妨げになります。
2.読むことだけに注意を奪われ、理解がおろそかになっている。
「間違えないよう、ちゃんと読みなさい」と、親や先生に言われると、子どもは一生懸命になって読みに集中します。しかし、「よく読めたね。どんなことが書いてあったかな?」と問いかけると、「えっ、わかんない」「覚えていません」などと答える子どもがいます。読むこと自体に気を奪われ、イメージングがおろそかになったのでしょう。このように、間違えずに読み切ることは大切ですが、何が書かれているかにも注意を向けないと、書かれていることの意味は理解できません。
3.言葉のまとまりや接続の関係を迅速かつ的確に判断できない。
文章を読むとき、一字一字を区切って棒読みすると、時間はかかるし言葉のもつ意味のまとまりも判断できません。文章を読むときには、文字の連なりをとらえながら言葉のまとまりを見つけ出し、さらにはそれらの接続関係を仕分けする必要があります。目が一度にとらえられる文字の数には限りがあります。とらえた文字数の範囲で意味づけをし、再び目を動かして先へと読み進めながら文章のアウトラインをつかんでいくわけです。その情報処理の精度や時間には個人差がずいぶんあります。読むのが苦手な子どもは、この作業がスムーズにできていません。
4.文章理解に必要な語彙が足りていない。
一生懸命に読もうとしても、語彙が不十分だと文章の内容を理解するうえで大きなハンディを抱えることになります。言葉の意味がわからなければ文意は正確に理解できません。小学生時代は、人生でいちばん語彙が増えていく時期です。特に4年生から6年生にかけては「語彙の爆発」と呼ばれるほど語彙の増加が著しいことで知られます。この語彙増加現象は自然に生じるわけではありません。家庭内の親子の会話や読書が後押しした結果です。その意味において会話や読書も立派な勉強です。そのことに目を向けていないと、思わぬ落とし穴にはまってしまいます。
いくらかでも参考になったでしょうか。問題の在処がわかったことで、対策の方法を思いつかれたかたもおありでしょう。ただし、「読んでも理解できない理由はだいぶわかってきたが、何をどうすれば改善できるかを示してほしい」と思っておられるかたもあるでしょう。そこで、近いうちにこのことについてお伝えしようと思います。興味をもたれたら本コラムにアクセスしてみてください。

