1年間の学習成果を高めるために心がけたいこと

 受験シーズンの終了とともに、全国の学習塾では学校よりも一足先に新年度の講座が始まっています。どのお子さんもやる気に満ちた表情で授業を受け、家庭での勉強にも元気いっぱいに取り組んでおられることでしょう。ただし、勉強は終わりのない長丁場の営みです。いかにして初志を貫き、最後までやり通すかが問われます。今回は、そのためにぜひとも大切にしていただきたいことについてお伝えしようと思います。

 学習成果をあげるには、勉強を生活の一部として浸透させ、継続性を高いレベルで維持することが大切です。そのために必須となるのは何でしょうか。「それは学習意欲だろう」と思われるでしょうか。間違いではありません。しかし、「まずもって」という視点に立つなら話は少し変わってきます。有名な教育社会学者は、「学習の習慣づけから入るのが望ましい」といった趣旨のことを著書で述べておられます。その理由も含め、学習の習慣づけが果たす重要な役割について考えてみましょう。

学習の習慣づけがもたらす大きな効果

1.勉強の積み重ね効果が生まれる。
 毎日決めた時間に学校や塾の宿題をすれば、既習内容の理解が深まり、長期記憶として順次脳内に貯蔵されます。そして、必要なとき(たとえばテストのとき)に求められる情報として取り出すことができます。つまり、学習を習慣化すれば脳内の知的ストックが膨大な量に蓄積されていくのです。

2.学習習慣が定着するにつれて学習意欲も高まる。
 学習の習慣化によって、上記1のような流れができると、「やればやっただけのことはある」という手応えを味わえます。勉強の面白みにも気づくようになります。そうなると、以前よりもやる気(学習意欲)は自然と高まることでしょう。つまり、習慣づけが新たな意欲を引き出してくれるのです。

3.時間が来たら自然と体が机に向かい、勉強が苦痛でなくなる。
 学習の習慣化とは、いわば「自然に机に向かう回路」を形成するようなものです。勉強が自動化され、無意識に体が机に向かうようになるのです。それは、勉強を始めるときの葛藤や、重たい決意から解放されることを意味するでしょう(そこへ行きつくまでに、親の辛抱強い声かけが必要です)。

 やるときはすごくがんばるけれども、気が乗らないときは全然やらない。そんなタイプのお子さんはおられませんか? この種のお子さんは、素質はあっても伸びません。高い水準の学力は、才能さえあれば身につくわけではないのです。努力をいかに継続するか。そこに学力伸長のカギがあるのです。この春のうちに、ぜひお子さんの学習の習慣化に着手しておきたいですね。親の苦労は、そういう面に注がれるべきです。勉強の内容に入り込み、教える行為は目先のわずかな効果をもたらすだけで、子どもの学習の自立の妨げになり、長い目で見ると子どもの成長にとって多大な損失でしかありません。

 さて、もうひとつ、一年の学習の始まりにおいて保護者に配慮していただきたいことがあります。それはお子さんの学ぶときの体の姿勢です。近年は上体を斜めに崩して不自然な体勢で勉強したり、椅子に座っても足をぶらぶらさせながら落ち着かない様子で勉強したりしているお子さんが増えているといいます。こういう着座姿勢の崩れたお子さんで、勉強のよくできる例はほとんどありません。集中力の伴った勉強ができないからです。一刻も早く改めておきたいですね。

 そういえば、私が指導現場に立っていたころ、着座姿勢について唸るような思いをしたことがあります。6年生の男子クラスでしたが、教室の壁際の縦一列に座っている5~6名のお子さんの着座姿勢が驚くほどよかったのです。背筋を伸ばし、まっすぐに私のほうを見て、うなずいたり、手早くメモを取ったりしている姿が今も記憶に残っています。彼らは学業面も優秀で、全員が第一志望の中学校に合格しました。さらに驚いたのは、6年後に彼らのほとんどが東京大学に進学したということを耳にしたことでした。授業を受けるときの姿勢、学ぶときの姿勢は、成果にも大きな違いをもたらすのですね。

 新しい年度の学習のスタートにあたり、「学習の習慣づけ」に注力することと、「背筋の伸びた着座姿勢」を身につけること、この二つについておかあさんやおとうさんに目配りしていただき、ぜひお子さんに定着させることをお勧めするしだいです。どんなに多く勉強しようと、どんなに精選された好課題に取り組もうと、成果につながる取り組みや姿勢を備えていなければ何にもなりません。

 まずは土台から固めていきましょう。成長著しい小学生時代は、やったらやっただけの成果を得られます。勉強の主役は子ども自身。その子どもが自ら学ぶ積極的な1年間を過ごすよう、愛情をこめてしっかりとサポートしてあげてください。1年間がんばり通せば、子どもは見違えるほど変わりますよ!