中学入試本番にどのような気持ちで臨むべきか
明けましておめでとうございます。今回が2025年最初のコラムとなります。今年も玉井式にご縁をいただいているご家庭の保護者に、少しでもお役に立つ情報を提供してまいりたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
さて、毎年1月から2月にかけて全国各地で中学入試が行われます。そこで今回は、受験生が入試本番で実力を出し切るためのアドバイスをしてみようと思います。もし、この拙文を玉井式の会員保護者の方々のほか、玉井式の導入塾の先生がたがお読みくださっていたなら、受験生の子どもたちへのアドバイスとして参考にしていただけるとうれしいです。
みなさんのお子さんは、勝負事に向き合うときに自分の士気を鼓舞するかのように、「よーし、絶対に勝つぞ!」と意気込みを言葉や表情に出すタイプですか? それとも「自信がない。自分の力じゃうまくいかないかも」と弱気の虫が騒いで尻ごみするタイプですか? どちらが一発勝負の場で勝ち残る確率が高いでしょうか。言うまでもありませんね。前者のタイプでしょう。ただし、意気込みや気合いが勝ちすぎると、思わぬ失敗をすることもあります。テンションが高まり過ぎて冷静な思考や判断ができなくなり、注意散漫に陥ってしまうからです。
入学試験やスポーツの試合、大勢を相手のプレゼンなどで結果を出せるのは、よい結果を出すことへの意気込みと、沈着冷静なメンタルの両方を兼ね備えている人です。そこで、もうすぐ中学入試に臨む子どもたちに伝えたいことがあります。それは、「大胆かつ細心に!」という心のもちようです。これは、一橋大学の創設者である渋沢栄一が座右の銘にしていたと言われる言葉です。新1万円札に肖像が使用されたことで、その名前が一般にも広く知られるようになりましたね。
入学試験という大きな関門を突破するには、物おじすることのない度胸が不可欠です。しかし、そのいっぽうで気合いが勝ちすぎてもいけません。一つひとつの設問の意味、意図を注意深く読み取り、ミスなく答える必要があります。この一見相反する二つの心の側面を併せもつことが入試でよい結果を得るために必須だと言えるでしょう。このことを心に刻み込むうえで、「大胆かつ細心に!」という言葉は、ぴったり当てはまるのではないでしょうか。私がこの言葉を知ったのはずいぶん昔のことで、大学受験をめざして学んでいたときのことです。入試でのパフォーマンス発揮に随分役立ったと記憶しています。
以下のイラストは、お子さんがいよいよ中学入試に臨む段階になったときに、どんな声かけが効果的かを考え、上述の「大胆かつ細心に!」の文言の趣旨を取り入れて作成したものです。受験生の子どもたちが集中力や思考、判断、記憶など、入学試験でフル稼働が求められる諸能力を存分に発揮するためのアドバイスとして参考にしていただければ幸いです。無論、同じ言葉で伝える必要はありません。みなさん自身の心のこもった言葉で伝えてあげてください。
まずは①を見てください。中学受験の大きな特徴は、まだ親に精神的に依存している年齢の子どもが受験生だということです。親がどんな対応をして入試に送り出すかで子どものメンタルは大きく変わります。もしも親が、「ここが受からないようではだめだ!」「受からないと許さない!」「ここは受かって当然!」などのような声かけをすると、子どもはただでさえ緊張しているのに、よけいなプレッシャーを感じてしまいかねません。これまで経験したことのないほどの緊張状態にわが子があるのですから、それをほぐしてあげることが大切でしょう。また、「どんな結果もおとうさんおかあさんは受け入れてくれる」と思えたなら、子どもはどんなに心強いでしょうか。まずは、過度の緊張をほぐすことが肝要です。
緊張をほぐす言葉かけのあとは、②のように勝負に臨むにあたって求められる士気を鼓舞する言葉かけを考えてあげてください。男の子と女の子では、多少表現方法は変わるでしょう。ここでの目的は、前向きに挑戦する気持ちを引き出すことです。おとうさんおかあさんが普段使っている言葉のなかから、適切な表現を選ぶとよいでしょう。上記イラストは男の子を想定したものですが、女の子なら、「今まで自分がやってきたことを信じて、精一杯やればいいんだよ」などの言いかたでもよいでしょう。
③は試験の結果を左右するミスの数を減らすための声かけです。意気込みが勝ちすぎると、却って注意散漫になりがちなもの。そこで、落ち着いて問題を解くとともに、書いたあとも念のためにチェックする慎重さを引き出すための言葉を考えてあげてください。たとえば、男の子なら「今まであなたはテストで散々ミスをしてきたでしょ。あれは、本番でミスをしないための練習だったのよ。それを思い出せば、本番で早とちりをしないで済むよ。がんばれ!」などの励ましも効果があるかもしれません。
中学入試は、「もう1回」が利かない試験です。しかし、受験生はまだ成長の途上にある12歳。内面の成長の度合いやコンディションしだいでどんな結果もあり得るということを忘れないでください。受かっても、受からなくても、受験までのプロセスで得たものの価値は変わりません。また、反省点も必ずあるものです。それらを受験後に生かすことが何より大切です。おとうさんおかあさんがこのことを踏まえ、お子さんが雑念に惑わされることなく入試会場に足を踏み入れるよう配慮されたなら、絶対に失敗はありません。お子さんがベストの心理状態で入試を迎えられるよう、最後まで最善のサポートをしていただくようお願いいたします。
お子さんの健闘をお祈りいたします!