男子と女子とではこんなにも違う!?

 今回は、男子と女子の違いについての話題を取り上げてみました。近年よく耳にするのは「男の子はよくわからない」というおかあさんがたの声です。「女の子のことなら大概のことは想像できるし、コミュニケーションにも困らない。それなのに、男の子は何でこんなにも理解不能なの?」と、困惑しておられるようです。男の子をおもちで、今この記事を読んでくださっているおかあさんは、特に問題を感じることなく子育てをしておられるならいいですね。

 おかあさんがたの悩みはどういうところにあるのでしょうか。それについては、つぎのような時代的背景も関与しているのではないかと思います。少子化が行きつくところまで進みつつありますが、現在小学生の子どもをもつおかあさんの世代も少子化の波に飲み込まれており、男きょうだいのいない環境で育った人が多くなっています。このような背景もあり、男の子特有の思考や行動様式をつぶさに見て知る機会がないまま親になり、男の子を育てるケースが少なくありません。その結果、「どうして男の子はこんなにも思うに任せないのだろう?」と困惑するような状況が生まれているのではないでしょうか。

 では、男の子と女の子とで大きく違っている点はどんなことでしょうか。まずそれを確認してみましょう。このコラムは玉井式の公式ホームページに掲載していますので、知育という観点も合わせて考察してみようと思います。以下は大雑把で簡単な男女の比較ですが、専門家の知見やネットによる情報等をもとに簡潔にまとめてみました。

 これに関しては、私にも思い当たる節がたくさんあります。私はかつて中学受験専門の進学塾で国語の学習指導をしていました。毎年6年生の男子を担当していましたが、ある年6年生の女子クラスを担当したところ、男女の違いを目の当たりにして驚きました。男子の場合、受験がある程度近づいてもあっけらかんとしており、苦手対策などについて助言をしたり指示を出したりしても、肝心の本人はさほど自分の現状を深刻に受け止めておらず、イライラさせられたものです。受験まであと1~2か月になってやっと重い腰を上げてがんばり始めますが、見通しを悲観している様子の男子は稀でした(内心は違っていたのでしょうが)。特別優秀な成績を上げている男の子は別としても、多くの男の子はそんな感じでした。この男の子特有の能天気ぶりを踏まえた指導を実践し、どうやって成果をあげるかが、男子クラスの担当者の腕の見せ所だったように思います。

 いっぽうの女の子は、記述式問題への対策や、説明文の読み取りのコツなどを説明すると、ほとんどの子は熱心にメモを取っていました。入試が近づくと、トップランクの成績を収めていた女の子が、「先生、わたしなんか〇〇中学合格なんて無理よね」「このままだと、受験する中学校に全部不合格になるよね」などと悲観論者のようなことを言い始めました。それも一人や二人ではありません。困難が目の前に迫ってきたとき、上表のように女の子は弱気になってしまうのでしょう。これは、「だいじょうぶだよ。きみなら絶対に受かる!」という励ましの言葉を求めるサインだったのかもしれません。

 総じて男の子はプライドが高く(何事にも楽観的で根拠のない自信をもっている)、人前で弱気なことを言うのを嫌がります。また、自己の能力に対するネガティブな指摘に反発します。おかあさんがたが手を焼くのはこの部分と言ってもよいでしょう。おかあさんが息子さんに対して心配している点をあれこれ言うと、それだけで反発して聞く耳をもたなくなってしまいます。そのくせ、地道に努力するわけではありません。行動面においては、リスクを恐れずに立ち向かう傾向が強く、そのためにけがをすることもたびたびです。特に、集団内で周囲にあおられると無謀と思えるような危険な行為にも及ぶこともあります。女の子は、そういった危険な行為に対しては尻込みをし、慎重です。

 勉強に関しては、男の子は継続性や計画性に欠ける傾向がある半面、その気になると驚くほどの集中力を発揮し、著しい進境を見せるときがあります。先生とのつながりを求める傾向は低く、先生の指示を喜んで受け入れる(先生のお気に入りになる)タイプの男の子は集団内で「ゴマすり」というレッテルを貼られることもあります。いっぽうの女の子は、コツコツと努力を積み重ねることができます。ただし、負けん気を発揮してがんばったり、ある日突然目覚めたかのように一気に力をつけたりするタイプは少ないように思います。ですから、奮起を強要したり、ショック療法を試みたりするのはご法度です。それよりも、タイミングのよい助言や激励をし、心の内にある不安を振り払ってあげるような接しかたが望ましいと言えます。ですから、具体的な指示やバックアップを続けることが必要でしょう。

 無論、中学受験をする男の子をただ漫然と指導したのでは、男の子の欠点がそのまま浮き彫りになってしまい、受かるものも受からなくなるケースが出てきます。そこで、女子ではやらない喝を入れるような機会を設けたり、うまく競争心を刺激して結果を競い合わせたり、よい点を褒め称えたうえで「今、自分が足りていないのはどういうところかな?」と問いかけて反省させるなど、男の子向けの対応をしていくことになります。

 最後に、男の子か女の子かに関わらず求められる配慮について。児童期までの子どもにとって親の影響力は絶大です。上級学年になると、男の子は何かとおかあさんに反抗します。女の子は、おとうさんと口をきかなくなります。しかし、親からの語りかけは欠かすべきではありません。そのときに留意したいのは、よい結果を得ている点、努力している点を指摘し、取り組んでいることを具体的に指摘してほめることです。男の子も、女の子も、自分がやったことをほめられるのはうれしいものです。能力をほめると、子どもは上から目線の評価だと感じ取るし、ほめられることを重荷に感じがちです。そのため、反発したり嫌がったりすることも少なくありません。子どもが素直に耳を傾け、やる気を高めるような接しかたや言葉かけをしてあげてください。そうすれば、互いが信頼で結ばれたよい親子関係がきっと築けることでしょう。