受験のプロセスを子どもの人間形成に生かす!

 もうすぐ春ですね。2月下旬~3月は、多くの学習塾が学校に先駆けて新しい年度の講座を開始する時期です。そこで今回は、これから1年間の学習生活を見通し、親としてどんなことを念頭に置いてわが子を見守りサポートすべきかについて共に考えてみようと思います。

 おそらくみなさんの多くはお子さんの中学受験を視野に入れておられると思います。発達途上にある児童期の子どもが学校の勉強に加え、より高度な内容の勉強に何年も取り組むわけですから、相当なエネルギーの投入を余儀なくされることになります。当然、どんな生活の下でどんな勉強をするかによって、子どもの個性の確立や人間形成に大きな影響を及ぼすのは疑いないところでしょう。保護者の方々におかれてはこの点を十分に踏まえ、お子さんの学習生活を見守りサポートしていただきたいですね。受験の助走期間は、子育ての仕上げと深くリンクしているのが小学生の受験の大きな特徴です。そのことをお忘れなく。

 では、勉強に対する親の関わりが子どもの人間形成にどう影響するのかを考えてみましょう。たとえば、以前お伝えしたかと思いますが、小学生の学習意欲は子ども自身の探究心や成就感、目標意識などよりも親の影響力が強く関与します。もう少し具体的に言うと、1~2年生なら「親にほめられたい」「親に叱られたくない」など、賞罰的な要素が子どもの学習意欲に大きな影響を及ぼします。また、3年生あたりから中学1年生頃(思春期前)にかけては、「親の期待するような人間でありたい」という願望が勉強に向かう意欲に強い影響力を発揮します。

 このことを踏まえると、わが子にどう関わるべきかが見えてくるのではないでしょうか。低学年の子どもは親にほめられたいといつも思っています。その願望を子育てに生かすべきでしょう。どんなときにほめられたか、どんなときに叱られたかを繰り返し体験するなかで、子どもは自然と親の期待する勉強の取り組みかたを身につけていきます。この流れに沿い、さらに上級学年になったら親が子どもに何を期待しているのか、どういう取り組みを奨励したいのかを言葉や態度で示してやるとよいでしょう。 
 ここで、具体例を通して望ましいほめかた、望ましくないほめかたについて考えてみましょう。

 どちらが望ましいかはおおよそおわかりでしょう。推奨したいのは②のような接しかたです。では、①と②の違いがどう子どもに影響するかを考えてみましょう。テスト成績がよかったら、大概の親は子どもをほめるでしょう。しかし、どんなほめられかたをされても子どもは同じように喜び発奮するでしょうか。必ずしもそうとは言えません。

 たとえば、①のように能力を指摘して称賛されるのは子どもにとって有難迷惑なことです。ほめられたことが励みや意欲を引き出すよりも、「つぎもよい成績をあげなければ」というプレッシャーにつながるからです。それが高じて、インチキをしてもよい成績をとろうとしたり、「成績さえよければ親は満足なんだ」と、親を馬鹿にしたりするような子どもになる恐れもあります。また、課題を自由に選択して取り組む場面で、高得点をあげやすい易しい問題を選ぶようになりがちです。さらには、より高いレベルをめざそうというチャレンジ精神を喪失する恐れもあるのではないでしょうか。

 いっぽう、②のように「よいテスト結果は努力のたまものである」という観点に立ち、「一生懸命努力したことが報われたんだね」というメッセージとともにほめたなら、子どもは掛け値なしにうれしく思い、大きな励みを得ることでしょう。よい成績は、たまたまとれることもあります。ですから、「努力する姿勢を親は重んじ、常にわが子の様子を見届けたうえでほめる必要があるでしょう。これなら、悪い成績をとったときも叱るのではなく、「残念だったね。でもあなたはがんばっていたと思うよ、おかあさんはそれがうれしいのよ。つぎはきっと巻き返せるよ!」と励ますこともできるでしょう。そういう親を子どもは尊敬するし、陰ひなたなく努力する人間に成長していくことができます。

 前回、基本的生活習慣の確立が、何事もエネルギッシュに行動する人間に成長するうえで重要であるということをお伝えしました。それと連動させ、つぎの点に留意してお子さんの学習生活をサポートしてみてはいかがでしょうか。

 子どもの活動エネルギーを高め、率先して物事に取り組む姿勢を尊重し、努力を怠らない人間になるよう期待し応援する。そのことは子どもの将来の歩みを明るいものにするうえで大いに効力を発揮することでしょう。中学受験のプロセスを、子育ての仕上げの場にするつもりでがんばってみてください。1年間この考えに基づいて子どもに接すれば、きっと手応えを得ることができますよ!