勉強に取りかからないわが子への対処法

今回が2026年最初のコラムとなります。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
年が明けるとすぐ、中学入試シーズンに突入です。今まさに真っただ中の受験生もたくさんおられることでしょう。受験は一発勝負です。長い期間をかけて磨いてきた実力が発揮できるかどうかは、体調やメンタルコンディションも重要な作用を果たします。お子さんがベストの状態で入試に臨めるよう、保護者におかれてはしっかりとサポートをしてあげてください。
さて、今回は小学生の勉強において親の悩みの種になりがちなことを取り上げてみました。それは何かというと、「予定の時間になったというのに、わが子がなかなか勉強を始めない」という問題です。おたくではそんなことはありませんか? 私は長年中学受験生の保護者から勉強に関する相談を受けましたが、最も多かったのが「やる気がない」と「時間になっても勉強を始めない」という悩みに関するものでした。この二つ、根は同じに見えますが、必ずしもそうとは限りません。みなさんは、わが子が予定の時間になっても机に向かおうとしないとき、どんな対処をされていますか?
よくある対処例をいくつかあげてみましょう。みなさんが試みておられるのはどれに近いでしょうか。
1 早く勉強しなさい!とせかしたり厳しく叱ったりする
2 どうして勉強を始めないのか理由を尋ねる
3 勉強するよう促すが、効果がないとあきらめてしまう
4 「あれ?勉強を始める時間が来ているね」と声がけする
以上の4つは、内容的に見て大きく2つにわけることができます。1と3の対応は、「子どもとは、勉強をしないもの、嫌がるものだ」という観念に基づいています。いっぽう、2と4の対応は「子どもにやろうとする気持ちはある。やらないときは相応の理由がある」という観念に基づいています。
どちらが望ましいでしょうか。無論、後者のほうがよいに決まっています。それなのに、私が記憶する限り1の対処を延々繰り返しているおかあさんがなんと多いことか。また、3ほどにはあっさりしていないものの、注意しても効果がないと結局諦めてしまうおかあさんが多いように思います。こういうことを繰り返していると、やがて子どもは親の言うことを聞かなくなってしまいます。小学校低学年の頃から「早く勉強しなさい!」を繰り返された子どもは、「勉強嫌い」になりがちです。親は「しっかり勉強して優秀になってほしい」と願っているのに、結果として子どもを勉強から遠ざけてしまう。それは残念というしかありません。
ここで一緒に考えていただきたいことがあります。それは、2と4の方法がなぜ望ましいかということです。それを掘り下げることで、子どもへのアプローチ、子育て全般への有用なヒントが見つかると思うからです。次のイラストを見てください。

まずは2の対応がなぜ望ましいのかを考えてみましょう。子どもに限らず、人間の行動には必ずそうするに至った理由があります。また、たとえそのときはやる気がしぼんでいても、もともとやる気のない子どもなんていません。わけがあってやる気がしぼんでいたのです。さらには子どもには子どもなりの悩みもあります。これらを踏まえたうえで、「何かあったの?」と声かけをされたなら、子どもも素直に勉強に取りかかれなかった理由をおかあさんに話してくれるでしょう。たとえゲームにかまけてサボりたくなった結果だったとしても、それがいけないことだと子どもはわかっていますから、親の思いやりのある問いかけに反発せず、「ちゃんとやらなきゃ」と思うのではないでしょうか。
つぎに4の対応がなぜ望ましいのかを考えてみましょう。子どもにもメンツがあります。勉強に取りかからなかったことに対して、1のように頭ごなしに命令されたり叱られたりすれば、反省よりも反発のほうが勝ってしまいます。結果、子どもは意固地になり、その日にやるべき勉強に手を付けないまま投げ出してしまうことになりがちです。それに対し、4のような対応であれば子どもを追い込まずに、行動を修正する心の余裕を与えます。「あっ、勉強の時間が来ていたんだね。今からやるよ!」と、取りかかることもできるでしょう。これなら親子間の対立も生じないし、子どもの自尊心も傷つくことがありません。よいことは「自分からやったのだ」と思いたいのが子どもです。「親に指示されて勉強するんじゃない」という心意気の部分(特に男子)も損なわれることはないでしょう。
さて、最後に多くのおかあさんがたはなぜ1のような対応を繰り返すのかについて考えてみましょう。親は子どもが期待通りにならないとき、理屈抜きに腹立たしい思いを募らせ、𠮟ってしまいがちです。理屈抜きに子どもをコントロールしようという衝動が湧いてしまうのです。では、どうしたらこの問題を回避できるのでしょう。子どもが親に反発するのは、それはわが子が一人の人間として成長しつつあることの証だと、肯定的に受け止めればよいのです。どちらが正しいかより、子どもが自分の意思を表明していることが重要なのです。「もはや子どもは親の従属物ではない」と認識すべきなのです。腹立たしい思いをするのはどの親も同じ。しかし、このことが意識にあれば、2や4のような対応をする心理的ゆとりも生まれるでしょう。
2026年の始まりにあたり、わが子が一段と成長し、自分でやるべきことに率先して取り組む姿勢を養うべく、親としてどうわが子と向き合うかを考えてみてはいかがでしょうか。「おかあさんが変われば子どもも変わる」と言われます。親の影響力が絶大なのはわが子が小学生までのことです。悔いの残らぬようがんばってください。

