入試直前の1日の価値は、これまでの5倍10倍!

 今年も余すところ20日ほどになりました。中学受験を控えたお子さんをおもちの保護者におかれては、いよいよ本番が迫ってきたことを実感し、気ぜわしい毎日をお過ごしのことでしょう。

 ただし、肝心の受験生である子どもは人生経験に乏しく、まだ先を見通す力が未熟です。したがって、大人のように入試までの日数を念頭に置き、対策に心を砕く子どもは少数です。むしろ、今に至ってやっとおしりに火がつき、目の色が変わってくる子どもが多いのではないでしょうか。それは、やっと受験勉強に気合が入り、大いなる成果を引き出せるチャンスが訪れたことを意味するでしょう。雑念に振り回されず、やるべきことに的を絞って取り組めば、これまでの5倍10倍の成果が期待できます。保護者におかれては、そのことを踏まえ、毎日の受験対策が歯車の嚙み合ったものになるよう配慮してあげてください。以下は、これから保護者に留意していただきたい点をまとめたものです。

①入試前の1~2か月こそ、受験生が最も力を伸ばす時期です。
 入試が近づいてくると「あと〇〇日しかない」という思いに駆られますが、これをそのままお子さんに伝え、不安をあおるようなことを言うのは禁物です。大人が焦ると、それが子どもに伝わり、地に足の着いた勉強ができなくなってしまいます。「入試本番までの〇〇日あれば、相当のことができるよ」と、お子さんにアプローチしていただきたいですね。そして、仕上げのための勉強のスケジュールをお子さんと一緒に練り、「これからの毎日の取り組みをしっかりやり切ればだいじょうぶ!」と大いに励ましてやりましょう。今どんな状況にあったとしても、希望を胸にがんばらせたいものですね。

 仕上げ期の学習メニューに関しては、お子さんが通っておられる学習塾がそれぞれに工夫を凝らしておられると思います。冬休みの講座を生かし、大いに成果をあげたいところですね。無駄を省き、密度の濃い対策をしていきましょう。子どもの力は1か月の取り組みでずいぶん変わります。子どもの成長力を信じましょう。

②中学入試に備えた仕上げ学習を無駄なくやり遂げましょう。
 中学入試(主として国・私立中学入試)では、つぎのような力が求められます。これらの力の現状をチェックし、どんな点に注力すべきかを考えるとよいでしょう。

1.記憶・スキルで対処できる力
 算数の計算問題、国語の漢字、理科社会の知識問題などが該当する。気が乗れば誰でも攻略できるので、最後まで計画的な努力の継続を貫く。

2.単元ごと代表的な出題パターンに対応できる力〈算数〉
 各単元の決まりを理解し、代表的な出題のパターンを手のうちに入れる。類題に根気よく取り組み、どのパターンで解くのかすばやく気づけるようになる。

3.文章をすばやく正確に読み取る力〈国語〉
 初見でいかに文章のアウトライン、構成(説明文・論説文)、主題・人物の心情(物語文)を掌握できるかが勝負。時間を設定して練習を繰り返せば必ず成果があがる。

 1~3のいずれも、1か月もあれば相当な成果が見込めます。1は、やればやっただけ得点になる要素です。最後まで粘り強くやり抜きましょう。算数では、単元枠のなかで決まったパターンに沿って出題される問題への対応力が問われます。ただし、既習の基礎内容をベースに少し応用を利かせるだけで正解できる問題が大半を占めます。2で示したように、いろいろ類題に挑戦して対応力を磨きましょう。国語の入試では、文章のジャンルに適合した読みの視点を携えているかどうかがポイントです。3で示したように、時間枠を設定して速読即解の練習を繰り返しましょう。これで問いに対する答えを迅速に引き出せるようになります。保護者におかれては、計画の進捗状況をまめにチェックし、お子さんの状態を見極めながら焦らずしっかり取り組むよう励ましてあげていただきたいですね。

③親は常にプラス思考に基づいてわが子に接してやりましょう。
 入試が近づくと、とかく親は子どもの足りないところにばかり目が向き、あれもこれもやらせようと注意や指示を出しがちです。その結果勉強が空回りし、何をやっているのか訳が分からなくなってしまうこともあります。子どもが勉強の成果をあげるための必須条件は、勉強に専念できる心理状態を保つことです。子どもは親の態度や言葉に敏感です。親は極力泰然自若とした態度でわが子に接し、やるべきことに的を絞った勉強ができるよう配慮してあげてください。

 上述のように、お子さんが雑念に振り回されず、やるべきことを絞り込んで集中して取り組むためには、親がバタバタしないことがまずもって求められます。特に気をつけたいのは、無意識のうちに子どもの緊張を助長するような言動をとることです。緊張は子どもの能力発揮にとって最大の敵です。親はプラス思考を基本スタンスと定め、家庭内を穏やかな雰囲気で包み込んでやりたいものですね。また、緊張緩和に有効な生活上のポイントを押さえることも大切です。以下の点も参考にしてください。

・毎日十分な睡眠を取るよう配慮してあげてください。セロトニンと呼ばれるホルモンは、心身のリラックスした状態を保つ効果がありますが、セロトニンの分泌が睡眠によって促進されるからです。

・毎日、一家だんらんの時間をわずかでもつくり、お子さんがリラックスしたメンタルを保てるようサポートしてやりましょう。これもセロトニンの分泌を促す効果があります。

・学校までの交通手段やルートの事前確認、入試直前模試への参加などは、本番での緊張回避に大いに役立ちます。入試当日の段取りが見通せるし、疑似体験としての効果が期待できるでしょう。

・無理な学習メニューは疲労と焦りのもとになります。勉強の時間はなるべく一定に定め、無理をせず気合の入った勉強ができるようお子さんをサポートしてあげてください。

 中学受験は子育ての仕上げ期と重なりますから、永遠に揺らぐことのない親子の信頼関係を築く格好の場でもあります。わが子の受験準備学習を見守り応援する過程は、親子の絆という、受験の結果を超える副産物をすべてのご家庭に与えてくれることでしょう。入試本番でお子さんが自分のベストを尽くせるよう、愛情深く精一杯の応援をしてあげてください。