子どもの学びの活性化に向けた親のサポートって!?

 同じように高いレベルの学業成績を収めている子どもも、その内実は様々です。勉強の楽しさや醍醐味を感じ取りながら、生き生きと取り組んでいる子どもの様子は見ていて気持ちがいいものです。しかし、なかには大人の指示や強制で学び、かろうじてよい成績を上げている子ども、受験のためだからとしかたなく勉強している子どももいるようです。目先の受験結果にとらわれ過ぎず、子どもが学ぶことに前向きな姿勢を育んでいけるような受験生活を実現したいものですね。

①優秀な日本の子どもに足りないもの
 以下は、近年のPISAテスト(国際学力比較調査)の結果を示した資料です。日本の子どもの学力は、世界トップランクの水準にあります。ただし、気になるのは子どもが勉強にどう向き合っているかです。上述のように、しかたなく学んで得た学力であれば、その学力は本物とは言い難く、また創造性の伴う活用を期待することはできないのではないでしょうか。

 日本の子どもの学力が高い理由としては、学校教育の質の高さも大いに貢献しているでしょう。しかしながら、日本の子どもは算数(数学)・理科が「大好き・好き」と答えた子どもが相対的に少ない、学校外での学習時間が他国に比べて著しく少ない、自己の能力に対する自信が不足しているという指摘もあります。これらも、国際比較調査から割り出された日本の子どもの傾向です。日本の子どもの弱点は、まさにそういった点にあるように思います。

②子どもの意欲や自信を支える役割を担うのは何?
 ここからが今回のテーマに基づく話です。みなさんのお子さんは、楽しく意欲的に日々の勉強に取り組んでおられるでしょうか。小学生時代の学びは、「もっと知りたい!解き明かしたい!」という強い欲求に基づくものであるべきです。この体験が学問への高い適性を育み、先々の能力開花につながるからです。それは受験のための勉強でも同じです。中学受験で学ぶ内容には、算数のみならず、国語、理科、社会、それぞれに子どもの知的欲求を満足させてくれる要素が数多くあります。子どもたちが勉強というものの楽しさに触れ、「勉強は自分にとって必要なものだ」と思って取り組んだなら、おのずと将来高い次元の学問を修めるための土台が形成されるのは疑いありません。

 こうした学びの姿勢を築くうえで大きな作用を果たすのは何でしょうか。それは親の存在です。子どもが本来もっている好奇心を稼働させるには、心の安定や充足が絶対条件となりますが、それをかなえてくれるのが親であり、毎日のコミュニケーションを通じて形成される親子の強い信頼関係に他なりません。みなさんのおたくの現状はどうでしょうか。おとうさんおかあさんは毎日忙しく働いておられます。しかし、子どもとの接触時間は絶対に必要なものです。また、親子一緒の時間がただあるというだけでは不十分です。揺らぎがちな子どもの意欲や自信を取り戻させる重要な役割が親にはあるのです。

③日常生活で親が心がけたいこと
 子どもがものごとへの興味関心をもち、学習活動を活性化するには、親を信頼し、「自分は愛されている。期待されている」という安心と充足の気持ちを携えていなければなりません。また、「親は何事も自分で考え、率先して実行することを望んでいる」と理解したなら、いろいろな局面においてそれを実行しようとするでしょう。つまり、子どもがどう成長していくかは、親とのコミュニケーションしだいなのです。そこで、みなさんの現状をチェックしていただこうと思います。以下のリストにYESかNOかで答えてください(〇をつけてください)。

 いかがでしたか? YESが6つか7つぐらいあったらまずまずでしょう。1~10それぞれの質問の意味を考えてみてください。1は行動の主体性や自主性、2は実行力、3は安心感(孤独や不安を取り除く)、4は努力を指標とした行動様式、5は素直な反省心、6は親への信頼の気持ちと心の安定、7は子どものコミュニケーション力育成、8はノンストレスのコミュニケーションの確立、9は結果を検証する姿勢、10は自分で考え判断する姿勢の醸成に寄与する効果を引き出します。いずれも子どもの自立(自分で立つ。自分のことは自分でする)と自律(自分を律する。自分で物事を適切に判断して行動する)を促すための関わりです。

④大切なのは、子どもに親の願いや期待が伝わること
 親も人間であり、常に完璧に子どもに接するのは不可能です。うまくやれないことだってしばしばあるでしょう。それは大した問題ではありません。大切なのは、方針が一貫していることであり、親が何を期待しているか望んでいるかが子どもに伝わっていることです。また、なまじ親が立派すぎると子どもは「親には到底かなわない」と思い込んでしまいます。親の望みは、わが子が親以上の人間に育ってくれることであろうと思います。そのために必要なことは何かを考えてみていただきたいですね。

 私は数多くの子どもたちや保護者を見てきましたが、親が常にわが子の頭を押さえ続けている状態(子どもに親の指示や命令に沿って行動させる)は、子どもの成長にとって望ましくありません。どうすべきかを自分なりに考え、自分で行動する姿勢を引き出すこと、そしてそういう姿勢や行動が見られたら必ず喜びほめることを繰り返す。それが自信や意欲に満ちた優秀な子どもを育てる秘訣だと思っています。ぜひ実行に移してみてください。これは親ならどなたでも実行できることであり、失敗することはありません。親の思いを子どもに伝え、それを子どもが素直に感じ取って実行する。それが可能なのは今のうちですよ。