入試で緊張を克服するメンタルのありかた

 あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。年明け最初のこの記事は、玉井式の公式ホームページで私の名前を冠した(恐縮です)コラム欄を開設させていただいてから47回目となります。月日が経つのはほんとうに早いものです。

 新しい年がやってくると、まもなく全国各地で中学受験シーズンがやってきます。入試が迫ってくると避けられないのが緊張との戦いです。ついこの間まで無邪気にあっけらかんとした表情をして、おとうさんおかあさんをイライラさせたり心配させたりしていた子どもたちも、さすがに入試の近いことを感じ取り、表情も引き締まってきたことでしょう。

 人間は自分の願望を明確に意識したとき、それを叶えたいという気持ちの反動として緊張を覚えるようになります。中学受験生の場合、「〇〇中学へ行きたい!」という気持ちがようやく強くなった代わりに、「合格できるだろうか」という不安が高まり、それが緊張をもたらします。この緊張をどう克服するかも入試の結果を左右する大きなファクターの一つと言えるでしょう。

 そこで今回は、「どうしたら緊張を乗り越えられるか」ということを話題に取り上げてみようと思います。おおよそ、試験で緊張しない人などいません。もっと大きくなった中学生や高校生だって例外なく緊張します。大人になり社会人になってからも、重要な仕事のプレゼンが迫ってきたときなど、極度の緊張に苛まれることがあります。まして、人生経験が浅い12歳の小学生の受験です。「本番で頭が真っ白になったらどうしよう」と、親子共々不安な思いをされているご家庭もおありでしょう。そこで今回は、この緊張への対処法について書いてみようと思います。


入試本番で実力を発揮するための心得

1.緊張は実力発揮に必要なものです。緊張を味方につけよう!
 失敗を緊張のせいにする人がよくいます。緊張はほんとうに人間のパフォーマンス発揮を妨げるのでしょうか。緊張は危機意識が働いたときに訪れます。すると脳のセンサーが鋭敏になり、最もよく働く状態になります。つまり、緊張は集中力を高め、パフォーマンス発揮に必要なものなのです。
 有名なスポーツ選手の言葉もそれを裏づけています。プロテニスの錦織選手は、「毎試合緊張しますけれど、それは決して悪いことではないと思うし、その緊張も力に変えられるようになったら強いですよね」と語っています。プレミアリーグ(英)で活躍したサッカーの岡崎選手も「全ての試合で緊張します。重要な試合に限らず、日々の試合も全て、緊張して当然。逆に緊張しないとまずいと思います」と述べています。プロ野球のメジャーリーグでおなじみのイチロー選手に至っては、「緊張しない人はダメだと思う」とさえ言っています。”「緊張が集中力を高めてくれるんだ。受験生の敵ではなく味方なんだよ」とお子さんに伝えてあげてください。

2.「緊張は実力発揮に役立つ」と知っているだけで、試験の成績は上がる!
 ハーバード大学で以下のような実験が行われました。60人の学生を2グループに分け(能力が均等になるように分けている)、数学の試験をしたのですが、片方には「緊張はパフォーマンスを高める」と事前に説明し、もう片方には何の説明もしませんでした。その結果は驚くべきものでした。
 何も知らされていなかった後者の平均点は705点でしたが、緊張の効能を知らされていた前者の平均点は770点でした。つまり、「緊張はパフォーマンスを上げる」と知っているだけで、緊張の呪縛から学生を解放し、逆にパフォーマンス発揮を促進する効果を引き出したのです。”お子さんに、「緊張は実力発揮に役立つんだ!」と、念押ししてあげてください。

3.深呼吸には過度の緊張を押さえる効果があります。
 「緊張緩和には深呼吸がお勧めだ」とよく言われます。しかし、大半の人が誤った方法で深呼吸をし、十分な効果を得ていません。一気に息を吸い、一気に吐いたために呼吸が浅くなり、却って緊張を強めるという逆効果を招いています。専門家(文末に記した参考図書の著者)によると、5秒かけて鼻から息を深く吸い、10秒かけてゆっくり口から吐き、さらに5秒かけて肺にある空気をすべて出し切るのが正しい深呼吸です。
 なぜ深呼吸が有効なのでしょうか。交感神経が優位にあると緊張が高まり、副交感神経が優位にあるとリラックスモードになります。深呼吸は、副交感神経の働きを促進し、過度の緊張をリラックスさせる効果があるのです。”「本番の直前には、何度か深呼吸を!」と、お子さんに伝えてあげてください。”そのときに、「自分はやれる」と心の中でつぶやくと、よりリラックスできます。

 そのほか、老婆心ながらのアドバイスも付け加えておきます。試験中の服装は多少寒く感じるくらいの服装が実力発揮には有効です。寒さを感知した脳が危険を察知し、集中力を高めるからです。服装は、移動時はあったかくし、試験中はやや薄着ができるよう、二段構えにしましょう。また、入試当日の朝は軽めの食事がよいとされています。これも脳の働きに関係します。多少空腹のほうが脳は危険を感じ、集中力を高めるからです。

 もう一つ。試験会場への到着は30分以上早めがお勧めです。到着時に胸の鼓動が高まりますが、保護者と一緒にいたり、仲間と話をしたりしているうちに気持ちが落ち着きます(塾関係者の応援がOKの中学校では、先生の励ましも効果的でしょう)。ギリギリ、まして遅刻は絶対に避けましょう。焦りや興奮はパフォーマンス発揮にとって最悪の敵だからです。さらにもう一つ。いよいよ試験会場入室のときが来たら、親子で笑顔を交わしましょう。笑顔は副交感神経の活動を促し、緊張をほぐしてくれます。

 中学入試は再挑戦の利かないその年限りの経験です。本番を間近に控えた今、体調管理もメンタルの調整と同様に大切です。最高のコンディションで入試に向かえるよう、しっかりとお子さんをサポートしてあげてください。一人でも多くの受験生の夢が叶いますように!

※今回のコラムは、「いい緊張は能力を2倍にする」樺沢紫苑/著 文響社 の著述を参考にして書きました。上記のプロスポーツ選手のコメントは、同書からそのまま引用したものです。