男子、女子が抱えがちな学習上の問題

 夏休みが終わり、学校が再開しました。本格的な秋を迎えるまではまだ間がありますが、一時のたまらないほどの蒸し暑さが収まり、やっと一息ついておられるかたも多いことでしょう。お子さんはコンディションを崩すことなく夏を乗り越え、元気いっぱいに過ごしておられるでしょうか。

 長い夏休みは、その過ごしかたや生かしかたによって個々の学力差がつきやすいものです。毎日の学習の計画を立て、スケジュールに沿って学び通せば、大きな収穫を得られるいっぽう、学校への通学が途切れることで生活が不規則になり、それが勉強にマイナス影響を及ぼすこともあります。どうでしょう。おたくのお子さんはうまく夏を乗り越えられたでしょうか?夏休み中に学習習慣が崩れたお子さんもおられるかもしれません。そのようなお子さんは、できるだけ早めに状況を立て直したいものですね。涼しくてしのぎやすい秋は、勉強にもスポーツに最もふさわしい季節です。ここで生活や学びのスタイルを適正な状態に戻し、巻き返しを図りましょう。

 ところで、男子と女子とでは勉強のはかどりの支障となる原因がかなり違っています。それを踏まえると、より効果的な勉強にたどり着くこともできるでしょう。そこで今回は、男子と女子にありがちな学習上の問題点を取り上げ、その原因を確かめたうえで対処の方法についてご提案してみようと思います。

 成績の低迷が続くと、「うちの子は能力がないのでは」と心配になる保護者がおられるかもしれません。 お子さんそれぞれに努力しているのですから、成績が上がらないのはある意味当たり前のことです。実際にはやった分だけ実力は上がっているのですが、相対的な比較で評価されるために進歩が見えないだけなのです。大切なのは、いかにして効率性の高い勉強を実現するか。成果は時間や労力に比例しません。がんばっても、学習方法に問題があれば成果は少なくなります。間違った勉強法を続けていると、成績が下降線をたどり、自信が段々なくなり、やる気がしぼんでいく、といった悪循環に陥りがちです。 以下は、男子と女子それぞれにありがちな学習の問題点の例をあげたものです(例外も多々あります。あくまでも傾向としてご理解ください)。

 男子のよいところは、気分が乗るとすばらしい集中力を発揮するところです。しかし、それがコンスタントに続かないのが残念なところです。また、同じことをやるのを嫌い、すぐに飽きてしまいがちです。やることなすことが雑で、成果のない勉強をくり返しているお子さんも少なくありません。これにも関連しますが、そそっかしくて慎重性を欠き、ミスをたくさんします。

 その点、女子は概ねまじめです。先生の指示をよく聞き、実行に移そうと努力します。しかしながら、取り組みが形式に流れがちで、やるにはやっているけれども、それだけで満足してしまうお子さんも見られます。また、「ああでもない、こうでもない」と、いろいろな視点で考えることが苦手で、解法をまるごと覚えて対処しようとするため、融通性や応用性を欠きがちで、それが成績低迷の原因になりがちです。また、ちょっとしたことでネガティブ思考に陥りがちなのも女子の特徴です。

 新しいことを学ぶとき、すべて1回でものにできれば苦労はありません。受験レベルの勉強ならなおさらで、授業を聞くだけでは十分でなく、家で何度もやり直しをしてやっとわかるようになることもたびたびです。ところが、授業を聞いただけでわかったつもりになったり、練習問題の解答・解説を読んだだけで満足してしまうお子さんが少なくありません。新出の学習事項は、反復してやり直さないと頭に浸透しません。今述べたような勘違いをしたままテストに臨んだ結果、さほど難しくない問題に躓いたり、必要な知識が記憶から取り出せなかったりするのが多くの子どもの現実です。

 先ほどお伝えしたような、男子、女子にありがちな問題点を頭においたうえで、勉強の現状を客観的にとらえ直してみてはいかがでしょうか。ゆっくりのようで、確実に高度な内容へ進んでいくのが小学校課程の学習です。中途半端な勉強を続けると空回りが常態化し、「やればやっただけ成果になる」といううれしい状態は訪れません。現状を捉えなおすには、つぎの三つの観点が参考になるでしょう。

  • ① 勉強の取り組みかた
  • ② テキストの問題・テスト問題の間違い直し
  • ③ 勉強の計画性や実行力

 塾の授業をしっかりと受け、家では授業で学んだことの見直しやテキストの練習問題に取り組む。この繰り返しがスムーズに行われていれば、自然と成果はあがります。もしうまくやれているかどうかわからない場合、お子さんが塾の授業をどのように受けているかを調べる必要があります。お子さんに聞いてもわからない場合は、塾の先生に確認をとってもよいでしょう。また、ノートやプリントの書き込みの状態を見ると、お子さんがちゃんと授業を受けているかどうか、家でやるべきことをやれているかがかなりわかると思います。

 子どもは一度取り組んだことをやり直すのを好みません(特に男子)。まして、間違えた問題のやり直し、それも悪い点を取った回のテスト問題のやり直しを嫌がります。しかし、もう少しでできていた問題が結構あるものです。記憶が新鮮なうちにやり直せば、それらの大半はやりこなせるようになるのですから、これをやらない手はありません。「失敗は成功の母」などと言われますが、テストでの間違い直しはまさにそれにあたるでしょう。お子さんを励まし、やり直しを徹底させましょう。

 決めたことを親が言わなくても計画通りにやれるようになるのが理想です。しかし、いろいろなことに気が移りがちで、気分にムラがあるのが小学生です。無理な計画を立てず、やれる範囲の学習を習慣としてまずは定着させましょう。やるのが当たり前になればしめたもの。次第にやらない自分が許せないようになるのが人間です。そこから成果があがり始め、それに伴って意欲も増していきます。「無理のない計画で、決めたことを必ずやり遂げるようになる」――これを当面の目標にしてはどうでしょうか。

 サポートにあたっては、男子女子それぞれの特徴を踏まえ、勉強の独り立ちに向けた辛抱強い応援を基本におきたいですね。たとえば、男子はおだててその気にさせ、ちょっとでも前向きさが出たら大いにほめるのが効果的です。女子なら、「あなたならきっとできるよ!」と勇気づけ、気持ちを支えてあげるとがんばりが効くでしょう。叱って奮起を促す方法は女子には向きません。

 小学生の勉強ぶりは心もとなく、大人にすれば“じれったい”の一語に尽きるでしょう。しかし、全部親が手を出し教えたのではいつまでも子どもは一人前の学習者に成長できません。親の手が届かなくなる時期は遠からずやってきます。「自立に向けた応援」を合言葉に、子どもの試行錯誤のプロセスを通した成長を引き出していきたいですね。それがやがてわが子の人生の歩みに大きな影響を及ぼすのは間違いありません。