家庭教育でどんなことを心がけていますか?

今回は、みなさんの家庭教育の現状について振り返っていただこうと思います。どのご家庭においても、それぞれに教育の方針がおありでしょう。それはどの家庭も全く同じということはありません。それぞれに重点を置いておられる事柄は違っているのではないかと思います。

つぎの1~17は、文部科学省が平成17年に小1~中3の子どもをもつ保護者6,742人を対象にして実施した家庭教育の実態調査で提示された質問項目です。たくさんあって恐縮ですが、まずはみなさん自身がこれらの質問リストに答えてみてください。それぞれの質問項目に対して、「とても心がけている」なら◎、「まずまず心がけている」なら○、「あまり心がけていない」なら△、「全然心がけていない」なら×でご回答願います。この後、調査の結果資料をご覧いただきますが、まずはそれを見る前にご自身はどういう状況かを確かめてみましょう。

家庭教育で心がけていること

※◎とても心がけている、○まずまず心がけている、△あまり心がけていない、×全く心がけていない。

いかがでしょうか。質問の内容を見ると、行動規範、生活習慣、行動の自立、学力形成、実物体験など、家庭教育に関わるいろいろな要素が取り上げられています。

これらの質問項目の多くは、しつけにも深く関わっています。以前、着物の仕付け糸は着物の形が整った段階ではずされるものであることを受け、「しつけの本質は、着物の仕付け糸の役割が最もよく言い表している」ということをお伝えしました。つまり、行動面の自立を達成すること、自分で考えて行動する主体性を身につけること、ものごとの良し悪しを判断できること、などがしつけの最も大切な目標であり、上記の質問リストもそうした要素と深く関わるものが多いということがわかりますね。
では、みなさんのご家庭と関わりの深い、小学生の保護者の回答結果を見てまいりましょう。


「子どもの育ちをめぐる現状等に 関するデータ集」(文部科学省)(https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/053/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2009/03/09/1236114_3.pdf)を加工して作成

どうでしょう。上表は、見ての通り質問への回答で「とても心がけている」もしくは「まあ心がけている」の割合が高い順に並べてあります。みなさんの回答と比べてみてください。みなさんが家庭教育の一環として心がけておられる項目と、アンケートの結果は一致しているでしょうか。無論、多くの日本家庭の回答傾向とみなさんの方針とが同じである必要はありません。自分の家庭教育や子育て、しつけの傾向を振り返ってみるきっかけにしていただければ幸いです。

 私が少し残念に思ったのは、おしまいの二つの項目に「とても」や「まあ」と答えた保護者がきわめて少ないことです。子ども時代に自然体験をしたり、博物館や美術館に行ったりした体験は、単なる情操教育の一環として意味があるだけでなく、先々何となくではあっても大学で修める学問領域や将来の進路によい影響を及ぼすことがあるからです。私の記憶では、欧米の保護者はこういった方面の家庭教育にもっと熱心であると思います。参考にしていただきたいですね。

 

<押さえておきたい!> 家庭教育は子どもの人間性の礎を築きます。

1.家庭教育においてはバランスも大切に。
上記調査の項目をチェックしていくと、家庭教育にも様々な要素があり、いずれも子どもの健全な成長にとって欠かせないものであることがわかります。みなさんが「あまり」「全然」とお答えになった項目を拾ってみてください。そして、わが子の気になる短所と家庭教育との因果関係について考えてみてください。何らかの気づきや発見があるかもしれません。もしもあったなら、日々の家庭教育に反映させましょう。そうした親の配慮は、きっとお子さんの成長に役立つでしょう。

2.自然体験は子どもの自己肯定感を育む!
かなり大がかりな調査によると、子どもの頃の自然体験や家庭での手伝いの体験は、子どもの自己肯定感を育むことが報告されています。その因果関係などについては、この限られた誌面ではとてもご説明できませんが、いずれ機会を見て「子どもの自然体験と自己肯定感」といったタイトルを掲げ、ともに考えてみようと思います。子どもは、児童期後半ごろから「自分はできる」という有能感や自己肯定感を少しずつ失っていく傾向があります。勉学などで躓いたり、友人関係で悩んだりする経験が影響しているのかもしれませんね。今のうちに、自然体験や手伝いを!