児童期前半の重要な学習 ④ ~“勉強のよさ”をたっぷりと味わう~

 今回は、「児童期前半の重要な学習」の4回目(最終回)です。これまでの3回は先々の学力伸長を支える重要な学力基盤となるものについて取り上げてきましたが、今回は具体的な学習の内容ではなく、勉強に向き合う子どもの内面に着目してお話します。

 児童期に“勉強のよさ”を数多く味わった子どもは、中学、高校、大学、社会人と年齢を重ねても変わることなく熱心に学び、向上心を持ち続けて人生を歩むケースが多いと言われています。児童期は、いわゆる「人生の原風景」を形づくる時期だからでしょう。“勉強のよさ”とは、児童期の子どもの場合、「考えるって楽しい!」「わかったときはうれしい」「やり終えたときは気持ちがいい!」といった精神的充足感が得られたときに感じるものです。そして、この充足感がさらなる学習活動へと子どもを駆り立てるのです。みなさんのお子さんは、いかがですか。“勉強のよさ”を味わっていますでしょうか。

 あるとき、学習の相談に来られた3年生男子のおかあさんに上記のような趣旨の話をお伝えしました。すると、「先生、それは違います。勉強とは歯を食いしばり、辛さに耐えてするものです。難しくても我慢してやっているうちに、おもしろさもわかるようになるんです!」と、反論されてしまいました。たしかに一理あるのですが、問題は肝心のお子さんがこのような勉強を受け入れ、取り組んでいるかどうかです。子どもの内面に思いを致す必要があるでしょう。

 そこで、塾でのその男の子の学習状況を確認しました。「授業中、よく寝ています」と担当者から報告がありました。どうも、その子は家庭教師をつけられ、毎日何時間も勉強させられているようでした。彼の心中には、「勉強から逃げ出したい」という思いが渦巻いていたことでしょう。親の目の届かないところで勉強を投げ出してしまうのも無理からぬことです。この件についてはおかあさんに何度も助言したのですが、聞き入れてはもらえませんでした。やがて中学入試が近づく6年生の秋深くになると、その男の子の成績はどん底まで落ち込みました。ここに至り、やっとおかあさんも自分の過ちに気づかれたようでした。幸い、その男の子は中学生になってから伸び伸びと学習に取り組み、がんばるようになったとか。おかあさんが対処されたのでしょう。

 ここで低学年期の子どもの話に戻りましょう。児童期前半までの子どもは、遊びと勉強を区別しません。おもしろそうなものなら何にでも興味を示します。それなのに、早くから「勉強は嫌い!」と言い出すのは、大人が勉強を押しつけるからではないでしょうか。無理強いが子どもの心に“勉強=嫌なもの”という観念を植えつけてしまうのです。強制するのではなく、子どもの好奇心を上手に刺激するような接しかたをすれば、まったく違った子どもになる場合もあるでしょう。

 では、「勉強=よいもの」「勉強=自分に必要なもの」と受け止め、興味をもって前向きに学ぶ子どもにするには、どうすればよいのでしょうか。拙いながら具体案を考えてみました。

① 子どもの学びを活性化させるよい教材を見つける
 低学年期の子どもは、うまく導けば算数のドリルや漢字練習帳なども積極的に取り組みます。しかし、これらは考えることの醍醐味や発見の喜びを味わわせてくれるものではありません。このような観点から、おかあさんがたには、本屋さんなどでよい教材を探してみていただきたいです。教材選びの目が養えます。また、低学年の子どもは手を使った作業を伴う教材を喜びます。ご存知かと思いますが、脳の発達にも役立ちます。これは授業をたくさん見ての感想ですが、玉井式の教材はとてもよくできていますし、「玉井式国語的算数教室」の授業も、“学びのよさ”を体感させるうえで有効だと思います。

② 低学年期は親子一緒に考える
 児童期の子どもは、親が自分に関心を寄せてくれると張り切るものです。低学年の場合、おかあさんが一緒に取り組んでくれると喜びます。勉強の進めかたや段取りを覚えることにもつながります。ただし、勉強に取り組む姿勢に合わせて少しずつ手を離すことも大切です。自立して勉強できるよう促すためです。子どもが自分でやれそうなことはひとりでやらせてみましょう。また、がんばったら大いに喜び、ほめてあげましょう。すると、子どもは達成感を味わい、自信をもつことができます。そして、やがて勉強を「自分に必要なものだ」と思うようになります。

③ 〇の数よりも、取り組みの姿勢や態度を評価する
 低学年期までの子どもの場合、自己評価よりも親の評価がやる気に影響します。そこで注意したいのは、何をほめるかです。○の数もさることながら、取り組む態度や、最後まで投げ出さずにやろうとする姿勢を評価し、それを大いにほめてあげるのがよいでしょう。これは玉井先生がたびたびおっしゃっていることですが、親はとかく○よりも×のほうに目を向けがちです。これでは子どもは励みを得られません。いっぽう、がんばりを評価された子どもは、「結果」よりも「努力」を大切にするようになります。このような価値観は、親がわが子にさずけることができる大きな財産ではないでしょうか。

④ リビングに図鑑や事典を置き、親子で活用する
 家庭で親子一緒のとき、動植物などについて会話することがあると思います。「これってどういうことかな?」「これは何の仲間かな?」などと知りたいことが話題に出たとき、「一緒に調べてみよう!」と促し、図鑑や事典、インターネットなどを使って調べましょう。すぐに行動に移すことが大切です。知りたいことがあったら調べることが習慣として定着します。リビングにいろいろな種類の図鑑や事典を置いておけば、やがてお子さんが自分で調べるようになるでしょう。このようなことが日常化すれば、お子さんは知的探索の楽しさを知った人間に成長することができます。

 子どもがどのようなタイプの人間になるかは、自我が確立する小学校の高学年ごろにおおよそ決まります。幼児期から児童期前半は、その助走となる大切な時期です。このときまでに、“学ぶことや知ることのよさ”をたくさん味わう体験をさせてあげたいものですね。このことが子どもの将来に向けた歩みを決めることになります。勉強嫌いの子どもにしてしまうと、一生後悔することになりかねません。保護者の方々には、「今こそ、がんばりどきだ」と心得て、愛情込めて今できることをしてあげてください。

<押さえておきたい!> 勉強に対する思いは低学年期に定まります

1.何ができるかより、どんな気持ちで取り組むかを大切に!
 勉強が嫌なものになるか、よいもの(大切なもの)になるかは、子どもの人生を決定づけるほど大切なことです。自分から望んで取り組む学びは充足感を与えてくれ、先々の人生を支えてくれますが、競争に勝つ(人より優位に立つ)ために学習を強要された子どもが心豊かな人生を歩むのは難しいのではないでしょうか。「できるようになる」ことを優先するのではなく、目の前の学習に興味をもち、楽しく学べるような配慮をしてあげてください。それがお子さんの健全な学習観を育てます。

2.子どものもつ好奇心の芽を育ててあげましょう!
 子どもはもともと好奇心の塊です。上記の①~④は、お子さんの好奇心の芽を育てるための提案です。他にもいろいろあるでしょう。特に、実物を見る体験をさせると、子どもは喜ぶだけでなく、自らの好奇心を専門性の高い領域へと向けるようになります。父親に博物館へ連れて行ってもらい、一生懸命に説明をしてもらった体験によって、世界的な物理学者(ノーベル賞を受賞)になったリチャード・ファインマン氏(米国)のような人物もいます。ちなみに、ファインマン氏のおとうさんの説明には誤りも少なくなかったとか。親の知識ではなく情熱が子どもを動かしたのですね。