“怒る”と“叱る”はどう違うの?

 幼児期~児童期の子どもは、わずかな期間にずいぶん内面の成長を遂げるものです。2年生、3年生になると小学校生活が軌道に乗り、クラスの仲間との会話量がどんどん増えていきます。必然、新しい知識を外からたくさん仕入れてくるようになります。そのぶん口も立つようになりますし、親の意に沿わない言動を身につけるようになります。「最近、親に逆らったり抵抗したりすることが増えた」と感じているおかあさんはおられませんか?

 無論、それは子どもが成長のステップを順調に踏んでいることの証です。ただし、いけない言動を放置すると、子どもは逸脱行動をエスカレートさせてしまいますから、ブレーキをかける必要があります。そこで生じるのが親子の軋轢です。低学年までの子どもなら、親が強く出ることで問題は収まりますが、中~高学年ともなるとそう簡単にはいきません。あなたはどう対処していますか? 子どものいけない点を改めさせるには、親としてある程度強い姿勢で臨む必要があります。

 そこで表題の話になります。あなたは「叱る」と「怒る」の違いを踏まえ、お子さんに対処しておられますか?怒るのは感情に任せた行為であり、叱るのは理性に基づく行為です。したがって、子どもの素直な反省を引き出す効果は後者のほうにあると言われます。「それはわかっている、でもわが子のことになるとつい感情的になって怒ってしまうんです」とおっしゃるかたもおありでしょう。子どもの抵抗にあうと、われ知らず支配的にふるまってしまうのが親なんですね。これは、太古の昔から世界中の家庭が突き当たってきた問題であり、子育ての道に立ちはだかる関所のようなものと言えるでしょう。

 それだけに、ただ「気をつけましょう」で解決する問題ではありません。親がわが子のことになると感情的に怒ってしまう。その理由やメカニズムについてもっと客観的な視点から検証していけばより冷静になれますし、わが子への対応も違ってくると思います。今回は、そのことを一緒に考えていただくために話題として取りあげました。同じパターンのトラブルを繰り返し、そのたびに不快な気持ちになるのを終わりにしたいものですね。うまくいけば、「ああ、親って報われない」と嘆く場面も少なくなるかもしれません。

 それでは、今回の本論に入りましょう。まずは、「怒る」と「叱る」の違いを客観的に分析してみましょう。心理学関係・教育学関係の書物や、インターネットから入手した情報をもとに、以下のように両者の相違点を比較対照してみました。

 多少乱暴な振り分けかたをしているかもしれませんが、「怒る」と「叱る」の違いがある程度お判りいただけるのではないかと思います。①~⑦の番号順に簡単にみていきましょう。

 右脳は感覚や直感に関わる分野で働き、喜怒哀楽に関与します。左脳は言語脳と言われ、論理的思考を司ります。「叱る」のは、論理に基づいて子どもを納得させるための行為ですから、左脳主導です。感情を発露とする「怒る」という行為とは全く違っていることになります。

 「怒る」とき、親は無意識に自分のメンツや都合という視点に立っています。いっぽう、「叱る」ときは子どもの立場に寄り添い、どう改めるとよいかを考慮しています。

 「怒る」とき、「悪いのは子ども」という観念が心の底で働きがちですが、それよりも「悪いのは子どもの行為で、子ども自体が悪いわけではない」と考えるほうが適切でしょう。子どもの素直な反省につながるからです。「叱る」のは子どもの行為を改めさせるためなのですね。

 「怒る」ときには子どもがやったこと(過去)だけに目が向きがちです。いっぽう、「叱る」ときには、子どもの成長を願うという視点があります。未来志向で子どもに接する。これが教育です。

 子どもの反抗にあうと、親は反射的に子どもをコントロールしようとしがちです。子どもはそういう親のスタンスに敏感に反応します。「子どもは親とは別人格なのだ」と認識し、子どもの考えにも耳を傾ける姿勢で臨みたいものです。そうすれば、子どもも冷静に親の話にも耳を傾ける心の余裕をもつことができるでしょう。

 ①~⑦はみな相互に関連していますから、これ以上の説明は不要でしょう。結局、「怒る」ときには親の都合や論理が軸になっており、「叱る」ときには子どもの成長という視点が軸になっているのだという違いがあるのだと思います。上述のように、子どもも本能的にそれを感じ取るのではないでしょうか。「叱る」ほうが効果を引き出せるのは当然ですね。冷静さを失ったときには感情を爆発させる危険性があります。そんなときにはいったん時間を置きましょう。そして、左脳の活動を待ち、落ち着いたところで子どもに話しかけるとよいでしょう(ただし、気持ちを切り替えたらすぐ行動に移す必要があります)。

 それでも叱るということにためらいのあるかたはおられませんか? 親に叱られないまま大人になっていく子どもは不幸ではないでしょうか。普段は優しい。でも、いけないときには叱ってくれるおかあさん。子どもはそういうおかあさんを尊敬します。子どもの成長という視点に立っていたなら、きっぱりと叱ってよいのです。叱らねばならないときには、「子どもをよりよい方向へと向かわせるためのチャンスなのだ」と心得ましょう!