子どもを優秀な人間に育てるおかあさんの共通点って!?

 やるべきことをやるべきときにやれる子どもと、やるべきことが目の前にあるのに実行に移せない子どもがいます。「やるべきこと」が勉強であれば、言うまでもなく前者の方が圧倒的によい成績を収めるでしょう。両者の違いはどこから来るのでしょうか。今回は、それをおかあさんの子育てとの因果関係から考えてみました。

 「勉強する予定の時間が過ぎているのに、一向に取り組む気配がない」、「やっと勉強に取り掛かったと思いきや、もうゲーム機を手にしている。うちの子にはイライラし通しです」――このような話をおかあさんがたから耳にします。そういう子どもは、勉強の必要性をわかっていないのでしょうか。そんなことはありません。おかあさんが常に気を配って声をかけておられるのですから。むしろ、「もっとがんばらなきゃ」と思っています。それなのになぜ行動に移せないのでしょうか。

 今からご紹介するエピソードは、それを考えるうえでヒントになるかもしれません。ある年の秋、受験を控えた6年生のクラスで、「おかあさんは怖いか優しいか」ということが話題になったことがあります。この話題は、子どもたちにとって身近で切実な問題のようで、たちまち大騒ぎになってしまいました。「うちのおかあさんは、成績が悪いとすぐ怒鳴ってくる」「ボクの勉強のことになると、うるさくて仕方ない」「いつも叱られてばかり。全然優しくない」など、みんな口々に母親への不満をまくしたてていました。そんななか、ある男の子がこう言いました。

「うちの母は、普段はとても優しいです。でも、ときどき怖いです、怖いと思うのは、ボクが約束を破ったり、やるべきことをやらなかったりしたときです」

 一瞬教室内が静まり返り、やがて「うらやましい」という声が漏れてきました。どのおかあさんも、常に優しい母親でありたいと願っておられるのに、現実はわが子が期待通りに動いてくれない。やるべきことをやろうとしない。気がつけば、注意や叱責をくり返している。子どもは子どもで、自分が悪いとは知りつつも「おかあさんは小言ばかりで、耳にタコができるよ!」とばかりに反発してしまう。そんな状態に陥りかけている家庭が多いのかもしれませんね。おたくではどうでしょうか?

 おかあさんは優しいけれど、いざというときは怖い。これは、子育てのスタンスとして理に適ったものだと思います。子どもは是々非々で臨むおかあさんを信頼し尊敬します。いけないときはそれを指摘し、反省の様子が見られないと厳しい姿勢で子どもに向き合う。子どもが行動を適切にコントロールできるようになるのは、このようなおかあさんの一貫した子育ての賜物でしょう。実際、先ほどの発言をした男の子は、6年男子約300名のなかで三本の指に入る優秀な成績を収めていました。普段は優しいけれど、いけないことをしたときは厳しい。そんなおかあさんであっていただきたいですね。

 ところで、おかあさんがいくら叱っても、全然効果がない状態はなぜ生じるのでしょうか。それは、おかあさんが日頃の親子関係において、“優しい”と“甘い”の線引きを明確にしておられないからではないでしょうか。子どもは自分のやりたいように行動したがるものです。いけないときに叱られない状況が恒常化すると、どこまでも悪ふざけをしがちです。よく言われますが、子どもは親の我慢の限界点を試すかのように言いつけを無視することもあります。ここで、“優しい”と“甘い”の違いをもう少し具体的な状況に照らして比べてみましょう(対比のため、少し乱暴に表現しています)。


 ‟優しい”おかあさんも‟甘い”おかあさんも、愛情の深さは変わりません。しかし、子どもに己を律する姿勢が身につくのは、‟優しい”おかあさんに育てられた子どもです。優しさは、子どもを思うが故の厳しさに形を変え得るものだからです。普段は優しくても、いざというとき、すなわち子どもが望ましくない態度や行動に走ったとき、見逃すことなく厳しい態度で臨む。これを一貫することで、子どもに自制心や実行力が身につきます。いっぽう、普段子どもに‟甘い“おかあさんが、いざというときわが子に厳しくできるでしょうか。‟優しい”と‟厳しい“は両立しますが、‟甘い”と‟厳しい“は両立しません。このことを胸に留めていただきたいですね。

 なかには「今さら自分を変えるのは難しい」と思われるかたもおられるでしょう。その場合、まずは「わが家の生活ルール」のようなものを親子一緒に作成することをお勧めします。そのなかに、お子さんの勉強の取り組みに関する事柄も含めます。お子さんも納得して決めたルールなら、守らなかったときの罰則も受け入れるでしょう。小学校の中~高学年ともなれば、自分の行為を自分で律することの必要性は、子ども自身も理解しています。「ルールを守ろう。守らなかったら自分が悪いのだから、罰を受けるのは当たり前だよ」――そう言って罰を実行すればよいのです。無論、ルールを守り、やるべきことをやり遂げたときは大いにほめてやりたいですね。それなら、厳しく叱るのが苦手なおかあさんも実行できるでしょう。クールに粛々と罰を与えればよいのです。

 子どもがどんな人間に育つかは、家庭環境によって決まります。ある意味、親が育てたようになっていくものです。できるなら、一貫した姿勢に基づき、子どもの望ましい成長につながるような接しかたを心がけたいですね。それはときに辛さを伴いますが、子どもの将来の歩みに多大な影響を及ぼすのは間違いありません。児童期は子育ての仕上げ期です。今こそ親の最大の出番です。
 

<押さえておきたい!> 愛情が伝われば、子どもは親の厳しさを歓迎します。

1.大事なのは一貫性です。子どもに迎合しない一貫した姿勢で!
 子どもも大きくなるにつれ、自分の行為の言い訳をしたり、叱責に対して反抗するようになります。しかし、子どもとの軋轢を避けようとして、子どものいけない行為を見逃したり許したりすると、親の言うことをまともに聞かなくなってしまいます。親には強い意志と一貫した対応が必要なのだということを忘れないようにしましょう。そういったときに役立つのが「家庭内ルール」です。

2.ルールを適用するのをためらわない。親の愛があれば心配無用です。
 子どもに罰を適用するときは、「ルールを破ったんだから当然ね」と、淡々と実行に移しましょう。普段たっぷりと愛情を注いでおられるのですから、それだけで、「いつも優しいおかあさんが、いざとなったら怖い!」と子どもは感じることでしょう。なお、罰は懲らしめのためではなく、あくまで反省を促すためです。したがって、罰の内容は家の手伝いなど、教育的に意味のあるものが望ましいでしょう。小遣いを取り上げたり食事抜きにしたりすると、親への反感を招き、逆効果になりかねません。