子どもがやる気になるほめかた、やる気を失うほめかた

 前回のコラム記事のおしまいのところで、「大人になって成功や失敗をしたとき、その原因を自分の才能に結びつけるか、それとも努力に結びつけるかは、子どものころの「ほめられかたで決まる率が高い」というアメリカの心理学者の言葉をご紹介しました。子どもの頃に親から何をどうほめられるかは、人としての生きざまに大きな影響を及ぼすわけですね。そこで今回と次回は、「わが子をほめること」にスポットを当てて書いてみようと思います。

 まずはみなさんに質問します。みなさんはどのくらいの頻度でお子さんをほめていますか? 目安は、1日1回以上です。多くの保護者は、「かなりほめています」とおっしゃいますが、お子さんに確かめると、「ときどきほめてくれるけど、もっとほめてほしい!」という言葉が多く返ってきます。児童期の子どもは、親にほめられることがなによりも励みになることを忘れないでくださいね。

 ある年、学習塾の担当クラスにいた男の子が、「ボクはおかあさんにほめられたことがない」と悲しそうにつぶやきました。早速機会を見て、「もっと息子さんをほめてあげてください」とお願いしました。すると、「でも先生、うちの子はほめようにもほめてやりたいところが全然ないんです」とはねつけられてしまいました。子どもは親の愛情を感じ取ってこそ、心を安定させ、ものごとへの興味をもつことができます。親のほめ言葉はがんばりの源なんですね。その男の子のやる気が出ないのも道理だと思い、心底かわいそうに思ったものでした。

 子どもをほめるということは、しつけの一環として親がもっと自覚的に実行すべき行動の一つです。外国のある知識人は、「子どもが本来もっている価値に気づかせ、その資質を最大限に発揮させるのがほめ言葉だ」と語っています。子どもはほめられると気持ちが落ち着き、自分という存在に自信をもつことができます。人間形成途上において、親に適切にほめられた子どもは、自他肯定型の健全な精神を養えることでしょう。今から大いにお子さんをほめてあげてくださいね

 前置きが長くなりました。今回は「ほめられた子どもが、親のほめかたをどう思っているのか」を、まずは事例でご紹介します。実は、子どもはほめられさえすれば喜ぶわけではありません。イヤだと感じるほめられかたもあるんですね。その実例をご紹介すれば、ご自身ならではの子どもの心に響くほめかたに気づけるのではないかと思ったしだいです。そのうえで、次回は「効果あるほめかたの原則」を一緒に考えてまいろうと思います。

 以下は、私が勤務していた中学受験専門塾で実施した通学児童対象のアンケートの結果です。「どういうほめかたをされるとやる気が高まるか」と、「やる気がしぼむほめられかたはどんなのか」という質問に対する回答をリストアップしてみました。対象は4年生と5年生の児童です。ランダムにピックアップしたいくつかのクラスでアンケートを行い、同種の回答が多かったものをピックアップしました。

 なお、回答の中にほめられかたに言及するのではなく、優しい声かけや激励に対する反応もありましたが、参考までに1~2例取り上げてみました。

 上記の回答例に、少し補足説明をしておきましょう。子どもがやる気を高めるほめかたには、ある種の共通点が見出せます。たとえば、1・2・3・5・6などは、いずれもよい結果が得られたかどうかよりも、取り組みの姿勢や努力を見てもらえたことを子どもは喜んでいます。また、親の優しさやいたわりの気持ちが感じられたときにやる気が高まることがわかりますね。9などの場合、子どもは誰だってテストでよい点を取りたいと思っているわけですから、気持ちは当然しぼんでいます。そんなとき、叱られるのではなく、明るく励ましてもらったなら、子どもはどんなに救われるでしょう。やる気も高まろうというものです。

 逆に、やる気がしぼむのは心からほめられていると感じられないときのようです。1・2・3・4・7・9などは、いずれもそれに該当します。ほめるからには本気でほめてやりたいものです。5の「やればできるじゃないか」というほめかたは、なぜ逆効果になるのか不思議に思われたでしょうか。「やればできるじゃないか」という言いかたは、日頃できない人間だと思っていることの裏返しであり、それを子どもが察してしまうからです。子どもを侮ってはいけませんね。また、6のような皮肉交じりのほめかたも逆効果を招きます。「この調子が続くといいんだけどね」などと、うっかり言ってしまうと、子どもは「どうせ長く続かないと思っているんだ」と反発してしまいます。

 以上、参考になったでしょうか。子どもは親の本心を見抜く天才です。いい加減なほめかたはできないんだということを学びました。少しでも参考になったなら幸いです。

 
<押さえておきたい!> 子どもの気持ちに寄り添ったほめかたを!

1.子どもは自分のがんばりを見てほめてもらいたいと願っています
 子どもは、結果よりもがんばりのプロセスを親がちゃんと見ていてほめてくれることのほうをよりうれしく思います。それは、親にたくさんほめられたいという子どもの願いと無関係ではないと思います。努力を奨励し、努力の様子を見てほめること。これが親の基本スタンスとして求められるものでしょう。これならたくさんほめることができますし、子どもも毎日の生活に張りができること請け合いです。

2.子どもは親の本心に敏感です。心からのほめ言葉を実践しましょう
 子どもは、親の本音・本心に敏感です。親が口先だけでほめていたり、何か裏の意図があってほめていたりすると、たちまち見破ってしまいます。小学生、それも中~高学年ともなると、もはやごまかしは利かないものだと心得てください。ほめるときには、心から誠実にほめてやりましょう。そんな親を子どもは心から尊敬し、親の望むような人間になろうと一生懸命がんばるのは間違いありません。