子どもの才能は生まれつき?
いいえ、家庭の関わりが大きな作用を果たします。


2015.11.06 「かたちの形」と流動性知能 〜1年生編〜 その1

 9歳までの能力開発という観点に立つと、「かたちの形」は「玉井式国語的算数教室」の重要な柱の一つと言える存在です。

 ご存知かと思いますが、中学入試において「図形」は得点差が生まれやすい、つまり能力の個人差がはっきりとわかる単元です。したがって、「図形」に強いタイプの子どもになっておくことは、中学入試においても大きなアドバンテージになります。

 すでにお伝えしたように、図形単元の能力は「流動性知能」の稼働領域であり、学習によって理屈を理解したり覚えたりすることで力がつくというよりも、学習を通して経験的に磨かれていくものです。このような学習体験が能力向上につながるのは10代前半までで、15歳をピークにして徐々にこの知能は低下していきます。したがって、発達の上昇カーブが急激な幼児期から10歳前後までの体験が、図形のセンスを身につけるうえで大きな作用を果たします。

 今回は、「国語的算数教室」で実施している「かたちの形」の授業から1年生の課題をピックアップし、保護者の方々に玉井式の図形学習の特徴やよさをご説明するとともに、家庭での望ましいフォローのありかたについてお伝えしようと思います。

 まず、テキストの第1回の「かたちの形」の授業で学習した内容からご紹介してみましょう。

 この回は、「さんかくけいをみつけよう(1)」という単元で、三角形の性質や決まりについて学びました。授業では、「さんかくん」というキャラクターが登場して案内役を務め、直線で描かれた絵(図)のなかに何個三角形が潜んでいるかを見つける手順や方法をアニメーションで一緒に考えていきます。目の向けかたひとつで同じ直線が複数の三角形にまたがっていることに気づくと、三角形を見つけ出すための視点ができあがります。そのことの楽しさを子どもたちに味わってもらいながら、自然と三角形がどういうものであるかを体感的に学んでいきます。

【例題】 第1回 「かたちの形」


 アニメーションを使った学習の利点は、何と言ってもわかりやすくて親しみやすいことと、圧倒的な時間効率のよさであろうと思います。たとえば、図形を構成する直線は、必要に応じて動かしたり消し去ったりすることができます。また、すでに見つけた三角形とは別の三角形に着眼させる場合、必要な部分を色で表示することもできます。

 先生が黒板やホワイトボードに大きな定規を使って直線をいくつも描いたり、指示棒で注目させたい線に目を向けさせながら説明を施したりする面倒な作業がほとんど不要となりますから、限られた時間のなかで質量ともに充実した授業を行うことが可能になります。おそらく、アニメーションによる学習は、板書や具体物による学習よりも数倍以上の時間効率で行えるのではないかと思います(無論、玉井式でも板書は使います。また、具体物を使った授業には別のよさがあります)。

 図形単元を小学校で正式に学習するのは随分上の学年になってからです(ちなみに、私の所属する学習塾では、中学受験に備えた図形学習が正式に始まるのは4年生後半からです)。しかしながら、その前に図形のセンスを養っているかどうかで取り組みは大きく違ってきます。いざ図形単元が出てきたとき、すでに素養の面で決着がついていたということがないようにしたいものです。

H,S

 

2015.11.13 「かたちの形」と流動性知能 〜1年生編〜 その2

 前回は、「かたちの形」の授業を話題にとりあげてみました。図形は中学入試での頻出単元の一つで、得点差が生じやすいことをお伝えしました。しかしながら、学校で子どもたちが図形を正式に学び始めるのは高学年になってからであり、この時点で能力に決着がついていることが少なくありません。

 玉井式では、こうした点に配慮して「学習指導要領」の流れに敢えて従わず、素質開花の流れを早めに築いておきたい単元の学習を子どもに体験させるようカリキュラムを組んでいます。無論、子どもの発達段階や年齢を無視して難しい課題を与えても成果はあがりません。子どもの現状を踏まえ、取り組んだことが子どもの才能開花に向けたよい刺激となるよう配慮しているのは言うまでもありません。

 また、ある単元を一度授業で学んだだけでは十分ではありません。家庭で「できたかな?プリント」に繰り返し取り組むことも必要です。ある学習分野に強い脳を築くには、その学習領域で働くニューロンの発火を促すよう、少しずつでも連続して学習を行われなければなりません。

 さらに、同じ単元をレベルアップさせながら繰り返し取り組むことも、同様の理由から成果を引き出すための重要な学習です。たとえば、前回ご紹介した三角形の学習は、1年生の第17回で再び登場してきます。ちょっと課題の例を見てみましょう。

【例題】 第17回 「かたちの形」


 どうでしょう。少し複雑になっているものの、やはり絵(図)のなかから三角形がいくつあるか見つけ出す課題です。そうやって、少し違った角度から学び直したり、徐々に学習内容をレベルアップさせたりすることで、この単元に向いた頭脳が形成されていきます。

 さて、先ほど家庭学習について若干ふれましたが、教室で受けた刺激をそのまま放置せず、似たような課題に繰り返し取り組むことが子どもの脳の成長には必須となります。

 その際に重要なことは、「親が○か×かにこだわらない」ということです。三角形が絵(図)のなかにいくつあるかを全部言い当てられていなくても、着眼のしかたが間違っていなければ、まずはそれを認めて子どもをほめることが最も大切なことです。「また不注意でミスしてるじゃないの!」などと叱っても、子どものやる気や自信を失わせるだけです。

 今大切にすべきことは、子どもに勉強することの、頭を使うことの楽しさを繰り返し味わわせることです。それが毎日の学習に弾みと意欲をもたらすのですから。これは、低学年児童の家庭学習の全てに言えることです。親は、正解を得させるために働きかけるのではなく、子どもが勉強に親しみ、勉強を自分にとって必要なものだと思わせることに重点を置くべきです。

 保護者にお願いしたいのは、家庭学習のフォローをする際に必ず「アプローチシート」に目を通していただくことです。たとえば、前回ご紹介した課題例の1に対応するアプローチシートには、次のようなことが書かれています。

 今の段階では、完璧に答えを合わせることに重点を置くのではなく、解答する過程で図形の性質や規則性のおもしろさを体感することに重きを置いて温かく見守ってください。こうした体験の積み重ねが、図形に対するイメージング力を高めていくことにつながります。

 こうした記述に目を通していただき、玉井式の意図に沿った学習が家庭で行われれば、お子さんの能力開花の流れはよりスムーズにできあがっていくことでしょう。小学生、特に低学年期においては、勉強に対して“快”の感情を子どもにもたせることが重要で、才能開花に道をつけるうえで必須のことなのだとご理解ください。親に叱られて勉強した子どもが、学問の世界で大成する確率はほとんどありません。わが子がいまどのような状態であっても、一歩ずつ前向きな学びができるようバックアップするのが親の務めではないでしょうか。親には忍耐が求められますが、お子さんが浴する恩恵は計り知れないほどです。

 今回は、「かたちの形」で学ぶ内容を1年生の課題のなかからピックアップし、どういう意図で指導しているのか、親は家庭でどのような観点からサポートすればよいのかについてご説明しました。順次、機会を見つけて2年生、3年生についても書いてみるつもりです。よろしくお願いいたします。

H,S

 

2015.11.20 子どもの“まねぶ”を支えるミラーニューロン

 みなさんは、「欠伸(あくび)は他人に移る」という現象を見たことがありますか? おそらくほとんどのかたは「あります」とお答えになるでしょう。またみなさん自身、他人の欠伸を目の当たりにして、まるで伝染したかのように自分も欠伸をした経験がおありではないでしょうか。

 では、どうして欠伸は移るのでしょうか。話がやや脱線するかもしれませんが、格闘技などの激しいスポーツを観戦していると、無意識のうちに体が選手の動きに応じて反応していることに気づいたことはありませんか? どうやら、そういうこととも関係があるらしいのです。

 1996年のことです。イタリアの神経生理学者ジャコモ・リゾラッティは、マカクザルのニューロンを調査しているとき、偶然におもしろい発見をしました。実験者が餌(ピーナッツ)をつまんだとき、それを見ていたマカクザルの脳のニューロンも、餌をとるときと同様の活動電位を発生していることに気づいたのです。この発見をきっかけにして、人間やサルの脳には他者の行為を見て、まるで自分も同じことをしているかのように反応するニューロン群があることが明らかになりました。他者の行為を、鏡のように脳内に映し出して反応することから、発見者はミラーニューロンと名づけました。

 このニューロンについて調査が進められた結果、ミラーニューロンは子どもの様々な成長の側面を支えていることがわかってきました。赤ん坊のころから、子どもはおかあさんの働きかけや行為を目にしながら、それをミラーニューロンの働きで脳内に映し出し、自分も同じことをしているかのように学習しているのです。

 このことから想像がつくように、子どもが新規なものごとを理解したり、できるようになったりするのは、ミラーニューロンの働きによるものではないかと考えられます。特に、直接時間を共有することの多いおかあさんは、手本を見せることで子どもの成長を促します。「学ぶ」という言葉は「まねぶ」の変化したものだと言われます。子どもが次々に新しいことを吸収していくのは、手本をまねて学び取るからですが、こうした行為を支えているのはミラーニューロンなのですね。

 ちょっと振り返ってみてください。子どものしぐさや表情、立ち居振る舞いのなかに、おかあさんの分身を見るような思いをすることはありませんか? もちろん、よいことも悪いこともおかあさんをまるで鏡に映し出したかのように子どもに反映されていることでしょう。

 ミラーニューロンの働きは、家庭での家族の交わりが子どもの望ましい成長にとって重要な役割を果たしていることを教えてくれます。近年は、子どものコミュニケーション能力の不足がしきりに話題にされています。このコミュニケーション能力は、親子の会話や家族と共にする生活のなかでその基盤が築かれます。現在の家庭環境が、わが子のコミュニケーション能力の発達という観点から望ましいものになっているかどうかを一度振り返ってみてください。

 たとえば食事の採りかた。朝食を子どもだけで採っている家庭はありませんか? 一人きりでの食事は「孤食」などと呼ばれていますが、これは子どもの成長にとって望ましくありません。それなのに、「孤食」が世界的に見てもかなり増えていると言われています。家族それぞれの生活サイクルがあるでしょうが、せめて朝食か夕食は家族全員がそろい、楽しい話に花を咲かせながら採りたいものです。それが子どものコミュニケーション能力を磨くことにもなりますし、食事の作法を学ぶ場にもなるでしょう。

 子どもとの会話の際に、ぜひとも大切にしていただきたいことがあります。それは、おかあさんとお子さんが互いの眼を見て言葉を交わすということです。相手の眼を見ながらの会話はミラーニューロンを活性化させます。ミラーニューロンは相手の目の動きに反応し、相手の心の内を察するコミュニケーションを可能にしてくれます。何よりも、互いを尊重しながら相手の言葉に真剣に耳を傾ける姿勢が養われます。それは、お子さんにとって生涯にわたる貴重な財産になるに相違ありません。

 今、お子さんと眼と眼を合わせた会話をしておられるでしょうか。「そんなこと、いつでもできるさ」と思われるかもしれません。ところが、いったん染みついた習慣を変えるのは意外と難しいものです。仕事で、相手との会話の間合いを図ったり、アイコンタクトをとったりするのが苦手なタイプの人が少なくありませんが、それは「変えたくても変えられない」のです。お子さんが小学生の今のうちに、ぜひ親の働きかけで「互いの眼を見た会話」を定着させていただきたいですね。

 近年は携帯などの便利なメディアが子どもにも普及しています。大人においては、画面を見ながらの歩行や自転車走行が問題視されていますが、人間形成期の子どもが画面を相手にする生活に染まってしまうと、どういうことになるでしょうか。私は「コミュニケーション不全」の子どもの大量生産につながるような気がしてなりません。

 相手の眼を見ながらの会話。それは、互いのミラーニューロンが刺激し合い、双方が相手の気持ちを汲み合う会話です。それがほんとうに心の通い合うコミュニケーションではないでしょうか。

 ミラーニューロンには様々な働きがあると言われますが、今回は特にコミュニケーション能力に関わる働きに着目してみました。家庭での親子の会話が、実はわが子のコミュニケーションスタイルの原型を築く大切な場になっているということをふまえ、今からの家庭内の会話のありかたを考えるきっかけにしていただければ幸いです。

 ※家族そろっての食事、互いの眼を見ての会話の重要性に関する記述は、それぞれイギリスの教育評論家の著述、日本の脳科学系の専門家の著述を参考にして書きました。

H,S

 

2015.11.27 「かたちの形」と流動性知能 〜2年生編〜 その1

 前々回は、国語的算数教室の「かたちの形」の意図や内容について1年生の課題を例にあげてご説明しました。「できれば、うちの子の学年の課題を例にして説明してほしい」というかたもおありでしょう。そこで今回は、2年生の課題をとりあげてみました。

 「1年生編」でもお伝えしましたが、図形単元は「流動性知能」の稼働を必要とする学習領域です。この知能は15歳(中3頃)が発達のピークとなり、以後は次第に衰えていくという特徴をもっています。高校生以後は、いくらがんばってもこの種の才能は低下こそすれ、上昇することはありません。流動性知能が著しい勢いで伸びるのは幼児から10歳前後まで。算数(数学)脳を鍛えるなら、まさに今のうちだと心得てください。

 今回ご紹介するのは「立方体の展開図」の課題例です。みなさん、小学校時代に勉強されたと思いますが、いつごろどんな課題に取り組みましたか? ちなみに、玉井式国語的算数教室では、2年生の6月末頃(学習塾によって若干異なります)に学習します。小学校では、さいころの展開図のような初歩的な内容が2年生の終わりごろに出てきます。かなり本格的なものは、4年生も終わりに近い2月頃(東京書籍や学校図書など)学ぶことになっています。

 私の勤務する学習塾は中学受験を専門にしています。算数の教材作成やテスト作成の担当者に、「うちではいつ頃立方体の展開図をやりますか?」と尋ねると、「4年生の12月から1月にかけてです」という返事が返ってきました。

 この担当者は、「この単元は、できる子はパッパッと閃くんだけど、できない子はいくらやっても進歩せず、しんどい思いをする単元です」と語っていました。やはり、一般に言われているように、この手の閃きやセンスを問われる単元は、高学年になってからでは学習成果を得にくいようです。玉井式が2年生の前半でこの単元に手を染めるのは、能力開発的視点に立つと的を射ていると改めて思います。

 では、第44回のテキストに出てくる課題をご紹介してみましょう。


 課題文は次の通りです。「箱の 外側の 面に、「かたち」と 書き入れました。 この箱を ひらいたとき、それぞれの 文字は どのように 書いてありますか。 文字の むきにも ちゅういして、てんかい図に 書き入れなさい。」

 この課題は、難しさの点では学校の教科書と同程度です。よって、2年生の夏休み前の時期なら難しすぎるということはありません。流動性知能に関わる課題は、無理のない範囲ならできるだけ早めに触れておくに限ります。

 この課題について見てみましょう。いちばん左の図のように、サイコロと同タイプの箱の3面にそれぞれ異なる文字を書きます。その箱を(1)と(2)のように開いたら、「た」と「ち」の2文字はそれぞれどの位置にあるかという問題です。

 こういうタイプの課題は、理屈よりも形を見てパッと反応できるかどうかがポイントです。このような能力を磨く学習は、アニメーションの特性が最も生きる場面と言えるでしょう。なにしろ、開いた箱を瞬時に閉じさせたり、元に戻したり、あらゆる角度から見せたりできます。また、それを短時間に何度も繰り返すことができます。したがって、子どもたちは「箱が閉じているとき、『か』がこの面にあるなら、開くと『た』はここに、『ち』はここにくるはず!」と理屈で考えるよりもはるかにはやく、「『た』はここ、『ち」はあそこ!』と答えてしまいます。こういう反応力がより難しい課題に取り組むときに生きてくるのです。

 ただし、教室でアニメーションを見たときにはできたはずの課題も、家庭でテキストを見ながら取り組もうとすると、答えるのに難渋するお子さんも少なくありません。

 この課題に呼応する「アプローチシート」の解説に目をやると、次のように書かれています。

 立方体の展開図や平行面に関する学習は、図形のイメージング力向上に欠かせない重要な単元の一つです。この回以降も、映像を通して繰り返し学習していきます。慣れるまでは、実際に展開図を作って、箱を組み立て、平行面がどこになるのかなどを本人の目で確かめさせることが大切です。多くの体験を積むことによって、自然と頭の中だけで立方体の組み立てがイメージできるようになります。

 慣れるまでに時間のかかるお子さんもいます。そういうお子さんには繰り返し体験させること、実物を自分でつくり、体が覚えるレベルまで浸透させることが必要だということのようです。繰り返し取り組むこと、実物をつくってみることが、低学年期の子どもの学習には必要なのですね。高学年で、「生まれつきの才能でパッと反応できる」かのように見えるお子さんだって、低学年の頃繰り返し体験したことでセンスを磨いたケースもたくさんあるのです。いけないのは、親がイライラしてせかすこと。これは集中力をスポイルし、子どもの進歩を妨げる行為に他なりません。

H,S

 




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