子のイラストバックナンバー

2019.2.1

子どもをいかに叱るか
その1


 このところ、子どもをほめることに関して書いてきました。しかしながら、毎日の生活においてはわが子をほめる場面よりも叱らねばならない場面のほうがはるかに多いのが現実であろうと思います。

 みなさんのご家庭ではどうでしょうか。わが子を叱る場面がどれぐらいの頻度であるでしょうか。ちなみに、私が小学生の学習指導をしていたときに、保護者面談で最も多かった相談の一つが「子どもを叱ってばかりです。どうしたものでしょうか。」というものだったからです。そこで今回は、叱るべき場面、叱らざるを得ない場面において、親はどう対処するのが賢明かをともに考えてみようと思います。

 欧米の教育書に、「子どもは、親の我慢の限界に挑むかのような振る舞いをする」といったような内容の記述があったのを思い出します。確かに、親がかっとなって怒鳴りたくなるような行為を繰り返す子どももいます。それはまるで親の堪忍袋の緒がいつ切れるかを試しているかのようです。大概は男の子ですが、男の子はそういう振る舞いを繰り返しながら、親の反応に応じた形で育っていくように思います。ですから、叱るべきときに叱れないおかあさんのもとで育つと、児童期後半になっても自分を適切にコントロールできず、傍若無人なふるまいをして周囲を困らせることになりかねません。

 まずは、一般的に親がどのような叱りかたをしているのかについて発達心理学者による調査の結果が紹介されていましたので、ちょっと確認してみましょう。

叱りかたのパターン

■直接的表現
1.望ましくない行為の禁止(制止)
2.望ましい行為の実行要求
■間接的表現
1.望ましくない行為の指摘(例:ほら、忘れ物した)
2.想起(前にしたことを思い出させる。例:前にもいったでしょ)
3.望ましくない理由の説明(例:火事になるに決まってる)
4.罰の予告(例:押し入れに入れるぞ)
5.逆説的な命令する(例:勉強したくないなら、勉強するな)
6.子どもの人格評価(例:「だらしない子どもだ」のように、子どもの人格特性に言及する)
7.突き放し(例:もう、好きにしなさい)
8.問いただし(例:どうして〇〇できないのかな)
9.話し手の不快感の説明(例:おかあさん、がっかりしたわ)
10.悪態、ののしりによる不快感の表明(バカ。死んでしまえ)
11.世間体意識(例:ご近所から笑われるよ)
12.その他(例:おれの子だったらもっとできるはずだ)
■罰の執行(例:実際になぐる、ける)

 上記の研究は、大学生と、小学5・6年の児童に、「おとうさんやおかあさんから怒られたとき、なんて言われましたか」と尋ね、それに対する返事(1,670件)を分類して同類のものをパターン化したものです。そして、叱られかたのパターンごとに子どもの反応の特色を調べたものです。事例の一つひとつをチェックしてみてください。思い当たる節のあるおかあさんが多いのではないかと思います。なお、このような調査が大掛かりでなされるケースが大変少ないそうです。ぜひ参考にしてください。

 さて、叱った親としては、素直に行為の誤りを認めたり(受諾反応)、謝ったり(謝罪)、なぜ叱られたのかを理解したり(納得反応)してほしいものです。このような反応を引き出した叱りかたは、上表の「直接的表現」の1・2や、「間接的表現」の1や2でした。

 そのいっぽう、子どもの反発を招きやすいのは「間接表現」の6(人格表現)や7(突き放し)だったといいます。この調査結果を著書で紹介されている先生は、「自分の性格を非難されたり自尊感情を傷つけるような叱り方をされたりすると、子どもは反発を感じ、かえって心を閉ざし親の言うことを聞き入れようとしないことがわかる」と述べておられます。

 ほめるにせよ、叱るにせよ、子どもの人格や人間性に言及するのは望ましくないのですね。すでにお伝えしましたが、「親切な子」「優秀な子」というほめかたは子どもの内的な自覚と一致しないこともありますし、こういったほめかたをされると、貼られたレッテルの通りを演じなければならないプレッシャーがつきまとうようになります。また、「ダメな子」「だらしない子」など、人格を否定されるような叱りかたをされると、子どもは自分の存在を否定されたように感じ、自尊心を著しく傷つけられることになります。

 今回はここまでで終わらせていただき、次は「効果ある叱りかたとはどういうものか」を具体的に考えてみようと思います。

H.S

2019.2.8

子どもをいかに叱るか
その2


 前回は、研究者による「親の叱りかたのパターン」に関する研究の結果をご紹介し、子どもの反発を招きがちな叱りかたとその理由について若干考察してみました。今回は、同じ研究に基づく「効果のあった叱りかた」についてご紹介し、参考にしていただこうと思います。

 まず、前回のおさらいですが、親としては子どもの望ましくない行為を改めさせるために叱っているわけですが、叱られる子どもが素直に親の子どもを受け入れるよう配慮することが必要です。「親なのだから、わが子がいけないことをしたのだから、どんな叱りかたをしようが構わない」とは思っておられないでしょうが、どうしても感情が押さえられなくなってしまうおかあさんもおられるようです。そういうかたは、叱ることが目的なのではなく、「子どもを適切な方向に導くために叱るのだ」という原点を忘れないようにしていただきたいですね。

 では、研究者によって紹介されていた、効果的な叱りかたの例をご紹介しましょう。

効果的な叱り方

1.くどくど叱らずに短時間で叱る
2.他者と比較して叱らない
3.なぜ叱るのかを明確にして叱る
4.子どもの言い分を聞き、頭ごなしに子どもを否定しない
5.問題の原因となったことだけを叱り、余計なことは叱らない
6.もってまわったような言い方は避け、直接的に叱る
7.感情的にならずに穏やかに叱る

 上記の1~7は、中学3年生を対象に行われた大規模なアンケートの回答を、カテゴライズしてまとめられたもののようです。自分なりの考えをもち、十分にそれを表現できる年齢のお子さんが納得できるのはどんな叱りかたなのかを知ることは、低学年児童の保護者にも先を見通しながら叱りかたを考えることができますので、役立つ情報になるでしょう。

 アンケートに答えた子どもの年齢は、みなさんのお子さんの年齢よりもかなり上ですが、「子どもがおかあさんの叱りかたについて望むのはどういうものか」は、おそらく同じであろうと思います。私が中学受験塾に勤務していたとき、何回か同趣旨のアンケートを小学4~5年生にしたことがありますが、概ね同じような反応があったことを思い出します。叱られる子どもの気持ちを知るうえで大いに役立つことでしょう。ぜひ、参考にしていただきたいですね。

 1から、なぜ効果があるのかを順に考えてみましょう。「くどくど叱らないで」というのは、年齢に関係なく、叱られる立場の人間に共通した思いでしょう。同じことをくどくど言われると、悪いのは自分だったとしても、反省よりも「うんざり」といった気持ちが勝ってしまいます。気をつけましょう。

 次に、子どもの不満で多いのは、「きょうだいや他者と比較して叱られること」です。ある年、私が担当していたクラスの女の子が、「おかあさんは、同じ塾にいるいとこと成績を比べては私の前でため息をつく」と、悲しそうな表情をしていたことを思い出します。やがて、受験をあきらめ塾を辞めてしまいました。決して叱られていたわけではなく、ただため息をしばしばつかれたというだけで、その女の子は耐えられなくなってしまったのです。身近な人間と比べられることが、いかに子どもの心を傷つけるかがわかりますね。叱るときには、あくまで当該の問題部分にのみ言及して叱りたいものですね。

 3についてですが、2からの流れで当然必要になってくることでしょう。叱られるからには、「なぜ叱られるか」について納得できなければ反省のしようがありません。「何がいけないのか」をしっかり押さえたうえで叱りましょう。そうすれば、子どもも言い逃れをしない(できない)と思います。

 4は、子どもを叱るときの原則としてよく覚えておいていただきたいことの一つです。頭ごなしに叱らず、子どもの言い分も聞いてやりましょう。すると、叱ったことが勘違いによるものだったことが判明することも少なくありません。また、たとえ言い訳に近いようなことでも、子どもは自分の言い分を聞いてもらえたことでおかあさんの公平性を感じることができます。それは、叱ることの効果を失わないためにも重要なことではないでしょうか。

 「うちのおかあさんはぼくを叱るとき、『そういえば、こういうこともあった、ああいうこともあった』と、昔の話をやたらもちだして長々叱るんだ」と、担当していた6年生の男の子からぼやかれたことがあります。まあ、そういうエピソードをご紹介するまでもなく、私自身も家内との喧嘩めいたやりとりにおいてしばしば同様の体験をしています。みなさんにも心当たりはありませんか? わが子を叱るときには、「あくまで当該の問題のみについて叱ったほうが効果的だ」ということを、覚えておいてくださいね。

 6ですが、小学2~3年生については、幼稚園児や低学年児童のおかあさんがたは当てはまらないかもしれませんね。もう少し子どもが大きくなり、大人がカチンとくるような反論や言い訳をしたりし始めると、おかあさんも我知らず皮肉交じりの叱りかたをしたり、もってまわったような言いかたで叱ったりするケースもあるでしょう。いずれにせよ、こういった叱りかたは叱ることの効果を失わせるので、「べからず集」の一つとして覚えておきたいですね。

 最後の7ですが、大人でも子どもでも感情的になってよい結果につながることは一つもありません。親が感情に任せてしゃべると、子どもだって感情を高ぶらせ、ただただ興奮した押し問答に陥り、そもそも何のために叱ったのかわからなくなってしまいます。子どもにすれば、おかあさんへの尊敬の気持ちも減退しようというものです。お互いに、冷静な気持ちでのやりとりを心がけたいですね。それには、まずもっておかあさんが冷静に、子どものいけない点を客観的に指摘したうえで、親の思いを伝えることが大切ではないでしょうか。

 以上の7つの指摘は、「どういう叱りかたがよいか」と、「こういう叱りかたはNGです」といった指摘とが混在していますが、子どもが受け入れて態度を改めるような叱りかたを考えるうえで参考になると思います。ご自身に改めるべき点がおありでしたら、そこから対応を変えてみてください。叱ったあとの後味の悪い気持ちがずいぶん軽減されるのではないかと思います。

 これからは、叱らないで済むことがいちばんではありますが、やむを得ず叱らねばならないときには、「叱り上手なおかあさん」をイメージしてがんばってみてください。

H.S

2019.2.15

低~中学年児童期の
子育て原則って!?


 小学校低~中学年期までの子どもにとって、親は絶対的な存在です。そのことは、「子どもは親が仕向けたように育つ」ということを意味するでしょう。親ががっかりするような振る舞いをしたとしても、子ども自身に問題があったためではなく、実は親の育てかたが原因だったということもあり得る話です。
 そこで今回は、低~中学年児童期までの子どもをもつ保護者の方々(特におかあさん)に、子育てで大切にすべき原則とはどういうものかを一緒に考えていただこうと思います。
 とは言え、原則論をひたすらくどくどお伝えするような書きかたは一方的な押し付けになりかねませんので、ちょっとクイズ形式での問いかけから始めてみようと思います。次の1~6の短文の〇〇の部分に漢字の熟語を当てはめるとしたら、どういうものが適当かを考えてみてください。なお、漢字が難しいケースは漢字の読みを書いていただいても結構です。

低学年児童期の「子育て原則」

1.子どもには、〇〇した態度で接すべし。
2.両親のしつけの方針が〇〇している。
3.親子関係がしっかりとした〇〇で結ばれている。
4.子どもの精神的な〇〇を促す。
5.期待〇〇は、子どもを潰すものと心得るべし。
6.〇〇優先主義は、子どもを歪(ゆが)めるものと心得るべし。

 どうでしょう。簡単過ぎましたか?意外と難しかったですか? 短い短文の空欄を埋めるのですから、思いつかないかたもおありかもしれません。もしも適切な熟語が思い浮かばなかったらごめんなさい。

 まず1の答えですが、「一貫」が適当でしょうか。「毅然と」でもよさそうなものですが、二文字の熟語ですので当てはまりません。2は、「一致」がよいでしょう。無論、近年はシングルマザー(シングルファーザー)も少なくありません。その場合は1のほうにシフトしていただければ問題ありません。3は「信頼」、4は「自立」5は「過剰」、6は「成績」もしくは「結果」が適当でしょうか。

 ここで取り上げた原則例は、私が30年以上中学受験に関わってきた経験から選択したことがらです。無論、正解は絶対的なものではありません。もっとふさわしい要素もあると思います。あくまで参考にしていただければ結構です。くだらない笑い話で恐縮ですが、かつて難関と知られる中学校の国語入試で、「一〇千〇」の空欄に漢字を当てはめる問題が出題されました。答えは当然「一日千秋」なのですが、珍答の例として「一日千円」というのが紹介されていました。思いもしない答えですが、まるでおとうさんの一日の小遣いみたいで苦笑してしまいました。これはご存知の方が多いかと思いますが、「〇肉〇食」の穴埋めで、正解は弱肉強食のところ、焼肉定食という珍答が紹介されていたのを思い出します。

 それでは、一つひとつの原則について補足説明をさせてください。まず、「子どもには一貫した態度で接する」ことについてですが、なぜ重要なのかは言わずもがなかもしれません。親の言うことが何かあるたびに変わると子どもは混乱します。そして、こういうことがたびたび繰り返されるとどうなるでしょうか。子どもは自然と親への対応法を学び、「親の言うことは聞いても無駄だ」と思い始めるかもしれませんし、「不満だけど、とりあえず「はい」と言っておけば、直に親は言ったことを忘れるだろう」などと、ずるい考えをもつようになるかもしれません。わが子に中学受験をさせると、親は子どもをがんばらせるよう苦心します。そのあまり、激励やアドバイス、指示や命令の言葉が迷走し、前言と真逆の接しかたをするような事態も生じがちです。どういう結果に至るかは言うまでもないでしょう。

 2の「両親のしつけの方針が一致している」ことの重要性ですが、一致していないとどういうことになるかを考えていただければ、わかり易いでしょう。父親と母親の力関係が反映し、強いほうの親の言うことを渋々聞くようになるかもしれません。私が学習塾の指導現場にいて感じたのは、「子どもは両親の言うことのうち、自分に楽なほうに流れる」ということです。端的な例は、「やりなさい」と「やらなくていい」の方針不一致です。大概の場合、子どもは「やらなくていい」に反応します。そのほうが楽ですから当然の成り行きでしょう。

 3の「親子関係がしっかりとした信頼で結ばれている」について。このことは特に意識していなくても十分に達成されているご家庭もあるいっぽう、一生懸命わが子に手をかけているにもかかわらず、子どもは親に不満を抱いているというケースも少なくありません。これはどういうことでしょうか。
 一つ考えられるのは、子どもの行為をちゃんと見て、やったことへのプラスのフィードバックを心がけておられるかどうか。子どもは自分のしたことを親が見守り、認めてくれることを望んでいます。まして、親が差し向けた期待に沿った行動をしたときはなおさらです。それなのに、子どもの行為の結果だけを見て、あれこれ注文をつけたり、反省を要求したりするとどうなるでしょう。こういうことの繰り返しが親への信頼の気持ちを歪めてしまうのではないでしょうか。

 4についてはどうでしょう。近年は少子化が進み、一家庭当たりの子どもの数は1~2人が一般的です。それが家事の省力化と相まって、子どもへの過保護・過干渉の傾向を生みだしているように思います。その結果、子どもの自立に向けた成長の芽を摘み取ってしまうような事態も生じています。
 本来、子どもは自分の力で何事もやり遂げようという欲求を強くもっています。低学年児童はそういった自立に向けた変化の著しい時期です。身の回りのことに関して、子どもが自分でできそうなことはやらせるようにしたいものです。そして、ちゃんとやれたことは大いにほめてやりましょう。このことは、上記の「親子の信頼関係」の構築にも多大なプラスの影響を及ぼすことでしょう。

 5は、わが子かわいさのあまり、ついやってしまう親の間違いの一つです。前述のように、少子化がすっかり定着した我が国においては、一人の子どもに向けられる期待はどんどん膨らんでいきがちです。しかしながら、子どもの現実とのギャップの大きい期待は重荷にしかなりません。
 わが子が一生懸命にがんばってできる範囲の期待を差し出してやりましょう。そして、やり遂げたときの満足感や喜びを繰り返し味わわせてやりましょう。小さな成功体験の繰り返しや、それを見守る親の誉め言葉や慰労の言葉が子どもの自信や意欲を育み、将来の大成へとつながるのではないでしょうか。

 最後の6について。ここでは学業成績への評価で考えるとわかり易いと思います。親がテストでの点数や成績にこだわり、よい結果を必要以上に強く求めると、子どもは自己向上心に基づいて学んだり、知りたいという好奇心に突き動かされて学んだりする姿勢を失ってしまいがちです。そればかりか、「成績さえよければ親は喜ぶんだ」と思ったり、「ズルをしてでもよい成績をとろう」などと間違った考えを染みつかせてしまったりする危険性があります。
 小学校の低~中学年までの子どもには、「親の期待は努力することなのだ。一生懸命に取り組むことなのだ」ということを伝え、少しでも取り組みの姿勢がよくなったら、しっかりと認めほめてやることが重要ではないでしょうか。「成績(結果)より努力(プロセス)」を期待として差し出されて育った子どもは、生涯前向きに生きていく姿勢を失うことはありません。

 小学校低~中学年までの子どもは、まだ精神的に親離れをしておらず、基本的に親の言うとおりにしよう(したい)と思っています。だからこそ、この時期の子育てのありかたが問われるのではないでしょうか。親が服従を命じるのか、自立を期待するのか、そういった観点がそのまま子どもの人間形成に影響を及ぼします。高学年になって、精神的に親子の距離ができてしまうと、親の影響力は一気に薄れてしまいます。「今こそ、子育ての大切な仕上げの時期なのだ」と心得、毎日の家庭教育にしっかり取り組んでいただきたいですね。

H.S

2019.2.22

叱る効果を高める
ちょっとしたコツ


 2月1日と8日には、「子どもをいかに叱るか」を話題に取り上げて書いてみました。今回は、その続きを書いてみようと思います。同じ趣旨のテーマを3回も掲げることは滅多にありませんが、それには訳があります。叱るという行為を大概の親は苦手に思っているにもかかわらず、ほぼ毎日のようにその必要性が生じるものだからです。

 叱るのを親が難しく感じるのは万国共通のようで、外国の教育書に必ず項目として取り上げられています。ある教育学者の著作を手にしてめくってみたら、「いかにして叱るか」について延々数十ページも割かれていました。これには少し驚きましたが、「どの国の親も、わが子を上手に叱れなくて苦労しているのだろう」と妙に納得した次第です。

 なぜ親は叱るのを難しく感じるのでしょうか。叱るという行為には精神的な負担が伴います。子どもは「いけないことをした」と思っていても、まだ行動規範がしっかり根付いていないうえ、親に対する甘えもあり、素直に言うことを聞いてくれないケースが多々あります。ときには興奮して抵抗してくる場合もあります。そういうとき、親は親で冷静さを失い、感情に任せて怒鳴ったり、手を出したりしてしまうことがあります。

 試しに、叱ったときにどういう気持ちになることが多いか、みなさんに質問してみましょう。次の1~3のうち、あなたはどれに当てはまるでしょうか。

1.叱った後、すぐに平静さを取り戻せる。
2.叱った後、気が滅入ることが多い。
3.1と2が、だいたい半々である。

 ある国の昔からの言い伝えに「叱らないのは相続権の喪失である」というのがあります。またある国では「叱られるのは子どもにとって必要なことであり、子どもには叱ってもらう権利があるのだ」という言葉があります。こうした教えがあるのは、わが子を叱る際に誰しも心の痛みを感じるものであり、それを乗り越えるには「叱ることの重要性」に正面から向き合う必要があるからではないでしょうか。そう、叱るという行為はわが子をまっとうな人間に成長させるために欠かせないものなのです。2や3の選択肢を選ばれた保護者(特におかあさん)には、ぜひこのような心構えをもっていただきたいですね。

 わが子の望ましくない行為に対し、親が強い信念をもって臨めば、その気持ちを子どもも微妙に感じ取るでしょう。そのうえで、叱ることの効果を高めるためのちょっとした工夫を試みてはいかがでしょうか。以下は、その一例としてご紹介するものです。

① 重要なのは、“何を言うか”より、“どう言うか”である。
 叱るときには、「叱る言葉」にばかりに気を取られがちですが、「どんな言いかたをするか」のほうがもっと重要です。具体例で考えてみましょう。
 「さっき『もうゲームをやめなさい』って注意したとき、おかあさんを無視してずっとゲームを続けていたでしょ。あれはどういうこと?」

 上記の声かけを、怒気を含んだトゲのある言いかたと、優しく言い含める言いかたとで実際に声を出してみましょう(ぜひ、一度試してみてください)。同じ言葉なのに印象が全く違ってくることに驚かれるのではないかと思います。優しく愛情を込めて叱るほうが、ずっと心に沁みてきます。うんざりした表情、ため息、すぼめた唇も避けたいものです。このような親のしぐさは、子どもを傷つけるうえ、親に対する反感の気持ちを湧きあがらせてしまいます。

② 一方的に叱るのではなく、子どもに説明や釈明をする余地を与える。
 一刀両断に子どものしたことを切り捨てたり、子どもを窮地に追い込んだりしても効果がありません。子どもの言い分にも耳を傾けてやることが大切です。だいいち、親が事実を誤認している可能性も多々あるのです。わが子が学校で先生に叱られて廊下に立たされたことを知り、すかさず「いったい今度は何をしでかしたの!?」と厳しく問い詰めたものの、あとでほかの子のしたことを先生がわが子の仕業と勘違いしたのが原因だったことが判明した、などという実例もあります。

 そもそも、子どもに自分の気持ちや考えを説明させる機会を設けることは、子どものコミュニケーション能力の向上にも大いに役立ちます。子どもが不満そうな様子だったら、「何か言いたいことがあったら言っていいのよ」と、申し開きのチャンスを与えてやりましょう。こういう親の寛容な姿勢は親への信頼の気持ちを引き出しますし、落ち着いて自分の考えを他者に伝える力を育んでくれます。

 どうでしょう。多少なりとも参考になったでしょうか。どうやら、叱るときの効果を引き出すには「穏やかに話す」ということが重要なキーワードになるようです。きつく叱らないと効果がないという考えは逆効果を生みだすだけです。また、どんなときにも子どもを一人前の人間として扱い、「子どもには子どもなりの理由があるのかもしれない」という寛容な気持ちで接することが、子どもの素直な反省の気持ちを引き出すうえで効果があるように思います。

 高学年児童の学習指導をしていたとき、子どもたちとの間で親子喧嘩の話がよく話題になったものです。理由はいろいろですが、きっかけとして一番多かったのは感情的に叱られたことへの不満でした。意外にも親に叱られたこと自体に不満を抱いている子どもはごく少数でした。「自分が悪いのはわかっている、でも、あんな叱りかたはないだろう?」といったことを言う男の子がいましたが、これは多くの子どもの本音だと思います。

 つまり、叱られること自体を子どもが嫌がっているわけではなく、問題は叱りかたなのです。「さっぱり、きっぱり叱る。そうした叱りかたなら、むしろ自分が悪いのだから歓迎する」――そんなことを言う子どももいます。仮に叱りかたを失敗しても、子どもは親の心の内をちゃんとわかっています。時間を置いて冷静になってから、もう一度親の考えを話したらどうでしょうか。きっと親の思いは伝わると思います。叱ることをためらわない親になりましょう。親が信念をもって接したなら、子どもは必ず真意を理解します。

 今回は、前の2回と重複する内容もあったかと思いますが、「まとめ」として役立てていただければ幸いです。「おかあさんは優しい。でも、いけないことをしたときにおかあさんの優しい表情が怖く見える」――こんなおかあさんであってくださいね。

H.S

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