子のイラストバックナンバー

2018.12.28

今年1年を
振り返ってみましょう


 今年も余すところあと3日ほどになりました。みなさんにとって、2018年はどんな年だったでしょうか。子どものいる家庭の毎日は慌ただしく、1日があっという間に過ぎていきます。その日その日を振り返る余裕などほとんどなかったことでしょう。

 しかしながら、1年は親にとっては瞬く間に経過するわずかな期間に過ぎなくても、子どもにとっては長い1年であり、今までに経験したことのない数多くのできごとのあった1年だと思います。なぜなら、子どもの人生経験はまだ10年に満たないほどであり、1年間というスパンの人生に占める割合が大人の比ではないからです。今年の終わりにあたって、わが子の成長の後を振り返ってみてはいかがでしょうか。きっとたくさんの貴重な気づきがあると思います。

 私事ですが、長年勤務していた学習塾を今春定年退職し、現在はフリーの立場で以前の職場や玉井式とお付き合いさせていただいています。玉井式の創設者である玉井満代先生とは、7年ほど前から「国語的算数教室」の導入以来様々な形で交流させていただいていますが、民間教育に対する考えかたに共通点や共鳴するところが多く、今に至るまで多くのことを学んだり経験させていただいたりしています。

 このコラムも、たまたま私が「学力形成」や「家庭教育」に関わる記事を多数書いてきた経験があり、また保護者対象の催しで玉井先生とご一緒する機会を度々いただいてきたことがもとで、「玉井式の教室にご縁をいただいている家庭の保護者や、玉井式に興味をもっておられる保護者に、子どもの知育に関する情報提供の場を設けたい」という意向を伺い、そのお考えに賛同して担当させていただくことになったものです。

 私の書いている文章は、一般の学習塾、特に進学塾に所属している方々の書かれるものとはやや趣を異にしているかもしれません。子どもの健全な学びを実現し、将来の大成に向けた“伸びしろ”を形成するためには、しっかりとした家庭教育が必要で、それを実現すれば子どもの未来は限りなく広がっていきます。適切な家庭教育は親子の信頼関係を築き、子どもの価値観や生きかたを望ましい方向に導くことができます。そのことを私は仕事を通じて実感してきました。それをぜひ子育ての最中にある保護者にお伝えしたいと思い、機会あるごとにお話ししたり文章に書いたりするようになりました。もっと子どもが大きくなってからでは、親の影響力は失われてしまいます。わが子を親が望むような人間に育てるチャンスはまさに今なのです。そのことを頭においてこのコラムの記事を書かせていただいています。

 親は子どもに勉学面だけでなく、人間としての様々な成長を望んでいます。そうした親の期待や望みを現実のものにするにあたって大切なことは何でしょうか。心身の健全な発達は無論絶対的な条件ですが、あえてもう少し踏み込んでいえば、「人間として、年齢に応じた自立をしていくこと」が求められます。何をするにつけ、自分で考え、判断し、実行しようとする姿勢がなければ、先々何をめざしてもうまくいきません。自立は、学業面の成果を意味あるものにし、社会に出て建設的な人生を送るうえで不可欠のものです。

 ところが、今はこの自立に向けた子どもの成長を引き出すのが難しい時代です。たとえば、今日の家庭の家族構成は親子二世代(核家族)がほとんどで、子どもの数も一人か二人が大半です。勢い親はわが子に手をかけます。私は学習塾に35年ほどおりましたが、過保護・過干渉の家庭がなんと多かったことか。わが子をかわいいと思えば、自然とそうなってしまうのも道理です。しかし、親が子どもに手を差し伸べれば差し伸べるほど、子どもの自立は遅れます。私自身も、そういった親をとやかく言えない子育てをしてきました。私自身もやっぱり過保護な親だったように思います(子どもの中学受験の頃から、「これではいけない」と思い、対応を変えました。それは正解だったと思います)。みなさんのおたくではどうでしょうか。1年の終わりに、「わが子との間合いや距離は適切だっただろうか」という観点からも振り返ってみてください。

 親が「これぐらいは一人でちゃんとできるだろう」と思ったことは、一人でやらせてみるべきでしょう。子どもを信じて手を離せば、すぐにはできなくても直に自分でやれるようになるものです。反対に、「まだうちの子には無理だ」と決めつけ、度々手を貸していると、子離れのタイミングを失っていつまでも自立できない状態が続いてしまいます。「手を放して見守るか、手を差し伸べるか」――この判断こそが子育ての勘所です。それを誤らなければ、子どもは人間としても勉強においてもちゃんと自立していくものです。

 この1年間のわが子との関りを振り返り、親として自立に向けた適切なサポートをしていたかどうかを思い起こしてみてください。いろいろ反省点のあるかたもおられるかもしれません。ただし、親の期待や愛情がお子さんに伝わっていれば大きな問題はありません。今から徐々に、「自分でできることを一人でやり遂げる」ということにプライドをもたせるよう、少しずつ親の対応をシフトしていけばよいのです。

 余談ですが、最近お年寄りが飼い犬の散歩に出かけたとき、飼い犬を抱っこして歩いておられる様子を目撃することがよくあります。かわいいからこその行為でしょうが、飼い犬にとってはどうでしょうか。こんな風に、わが子をかわいがってしまうと、世間の荒波に抗して逞しく生きていく人間は育たないのではないかと心配してしまいます。わが子はやがて、理不尽なことの多い人間社会を生き抜いていかねばなりません。親が状況に応じてサポートできる今だからこそ、自立に向かわせる子育てをする必要があるのではないでしょうか。

 今年1年、拙い文章をお読みくださってありがとうございました。では、よい年をお迎えください。




H.S