子のイラストバックナンバー

2018.12.21

子育ては芸術である!
――この言葉を胸に新たな年へ


 今年も段々と残り少なくなってきました。今、子育ての真っ最中にある保護者、特におかあさんがたにおかれては、気ぜわしい毎日に追われてゆっくり自分を振り返ってみるゆとりがないまま、今年の終わりが近づいているかたも少なくないのではないかと拝察します。

 今回のコラムタイトルに、少し驚かれましたか? 子育ては芸術である――これはずいぶん昔読んだ本のなかにあったもので、今やその本のタイトルも著者の名前も思い出せないのですが、この言葉だけが強く私の心をとらえていまだに印象深く記憶に残っています。

 思うに、子育ては全てのご家庭、全てのおかあさんごとにみな違います。世界中に一つとして同じものがなく、その大切さにおいて他と比較しようのない唯一無二のもの。そして、親として限りない愛情と情熱を注ぎ、あらゆる困難を押しのけ、創意工夫を絶えることなく続けていくのが子育てです。これほど尊く創造性豊かな仕事はありません。だからこそ、識者のどなたかが「子育ては芸術である」と表現されたのではないかと思います。

 こう考えてみると、お子さん一人ひとりは、親の芸術活動(子育て)によってつくられる作品なんですね。しかしながら、人間の子どもはおかあさんの意のままに操れるモノとしての作品ではなく、感情を携えた一個の人格を備えた作品です。お子さんが生まれるまで真っ白だったキャンバスは、すでに様々な彩りがちりばめられていることでしょう。その彩りをより美しいものへと仕上げていくのが残された子育て期間の課題であろうと思います。まだまだ仕上げには工夫が必要です。ここで一度、みなさんの芸術活動を振り返ってみてはいかがでしょうか。

 というのも、今日の子育ては難しくなっています。それは子育ての場や環境がかつてとは様変わりしているからです。親にはいろいろ心づもりがあったとしても、子どもが必ずしもそれを受け入れてくれるとは限りません。もっと言えば、親が途方に暮れるような現実に突き当たるようなことも少なくないのです。既存の価値観や規律が通用しない。そんな時代には、これまでにもまして親の子育てに対する強い信念や行動の一貫性が求められているように思います。

 そんなことを思っていると、先日何気なく手にした本の一節に、子育てを芸術活動に見立てて親を励ましている箇所が目に入りました、著者はアメリカの心理学者であり精神科医をしておられるアウグスト・クリというかたです。以下は、みなさんにご紹介したい部分をピックアップしたものです。

 かつて親は権威主義者でした。ところが最近では、子どもまでも同じように権威が好きになっています。かつて、教師は生徒の英雄でした。ところが最近では、生徒の犠牲者になっています。(中略)子どもはまるで王様のように振る舞い、なんでも自分の思い通りにしようとします。
 親はまず、「いけません」と怯まずに子どもに言うことを学ぶ必要があります。親の「否定」を聞き入れない子どもは、「人生は自分の思い通りにならない」ということを学べません。
 次に、「いけません」と子どもに言ったときには、子どもの脅しや駆け引きを聞き入れてはいけません。そんなことをしたら子どもの感情の起伏が激しくなるだけです。(中略)子どもが社会に出たときに感情の起伏が激しく、脅しや駆け引きをするようでは、社会で生き抜くことは難しいでしょう。
 (中略)私たちは困難な時代に生きています。社会の決まりや精神的なアドバイスがもはや役に立たない時代のように思えます。世界中の親たちが、拠って立つ指標がなく子どもの世界を理解する手段を持たずに無力感を抱えています。はっきり言えば、子どもの心をつかむのは、子どもの体を知るのと同じで、非常に困難です。子どもの知性に刺激を与えるのは、一種の芸術です。
 ただ、これだけは言っておきたいのですが、すばらしい親は、子どもの教育に終わりがないことを知っています。「わたしにはよくわかっている」とか「人の助言なんていらない」と言う人は、すでに逃げているのです。教育とはひたすら我慢することだ、と肝に銘じてください。我慢できない人はすぐにあきらめてしまい、学ぶことのできない人は知性の道を探せません。

 知性は、人間が創造的な人生を歩むうえで欠かせないものです。だからこそ、子どもに芽生えようとしている知性に刺激を与えることを、「一種の芸術」であると言っておられるのでしょう。

 上記の学者(医者)は、親に強い信念とその実行者であることを求めておられます。それは難しいことですが、それを受けて次のように励ましておられます。

 すばらしい親は、たとえ子どもが親の期待を大きく裏切り、精神的に不安定な状態になっても、絶対に子どもを見捨てません。世間がいくら子どもに冷たい目を向けても、私たち親はその子が将来必ず立派な大人になることを疑ってはいけないのです。
 すばらしい親は発想の種をまくだけであり、子どもをむりやり言いなりにさせようとはしません。知性という大地を耕し、いつの日かそこから発想の芽が出るのをひたすら待つのです。
 (中略)なかには親の差し出す手を拒み、自分のだけの世界に閉じこもり、孤独に震えているお子さんもおられるでしょう。自惚れが強く、非常に頑固なお子さんもいます。そんなときはどうしますか。子どもを見捨てますか? とんでもないことです!
 (中略)子どもを育てるとき、親は詩人であるべきです。悲嘆に暮れることもあるでしょうが、決して絶望してはいけません。傷つくかもしれませんが、決して諦めてはなりません。親はだれにも見つけられないものを見つけださなければいけません。子どもたちの心の奥にはすばらしい宝が眠っているのですから。

 残り少なくなった2018年ですが、今回の記事をきっかけに、この1年の子育てを振り返りながら、親としての心のもちようや、わが子に対する対応のありかたについて考えていただければ幸いです。

 あなたの子育てにおけるあらゆる苦労は、「わが子のすばらしい人生の歩みを引き出すための芸術活動に他ならないのだ」ということを、忘れないでくださいね。

H.S